労働力不足が招く低成長
低成長の大きな要因となっているのが、商品やサービスを生産するために費やされた労働量を示す「労働投入」の減少です(表⑤)。いくら「資本投入」を行い「生産性」の向上を実現させたところで「労働投入」の落ち込みが日本の潜在成長率を押し下げているのです。これから40年にかけては、団塊ジュニア世代の一斉退職が控えています。その一方で、少子化は加速する一方です。若い世代では、「節約術」として子育てをしない選択をする人間が増えています。これからの時代、労働投入はさらに減少していくことが予想されます。
高市首相は、「責任ある積極財政」を掲げ、経済成長に伴う税収増を基盤とした持続可能な「強い経済」の実現を目指しています。しかし、成長の果実はほぼ得られない中、インフレにより「国民」の富が「企業」と「政府」に移転しているとも言える状況なのです。経済成長において不可欠である労働力の確保は、国民生活が豊かであることが前提です。そのためにはまず、インフレによって傷んでいる「国民セクター」への手当を行うべきでしょう。政府は、来年4月から食料品の消費税を1%へと引き下げるべく準備を進めています。個人的には「国民セクター」への救護策として最低限やるべきことだと考えています。
こう申し上げると、「放漫財政」を危惧する声もあるでしょう。日本の財政支出を見るうえで重要な指標のひとつに、「本予算+補正予算─税収」(GDP比)があります(表⑥)。これは、政府の財政支出の規模を表しているわけですが、実はこの数値が大きく跳ね上がったのは過去3回だけです。
一つ目が、リーマンショックが起きた08年。その次が、東日本大震災が発生した年にあたる11年。いずれの年も、対GDP比で約13%となっています。そして三つ目がコロナ禍の20年で、過去最大の20%にまで跳ね上がっています。
では、積極的な財政出動を掲げたアベノミクスを打ち出した第二次安倍政権はどうだったのでしょうか。13年から19年にかけては、実は10%以下に収まっていたのです。
※この続きでは、高市政権が積極財政ではないことを山﨑氏が説明しています。約6000字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア『文藝春秋PLUS』と『文藝春秋』2026年8月号に掲載されています(山﨑慧「サナエノミクス、なぜ生活は苦しいのか」)。
■山﨑慧(やまざき・けい) 2008年、大和住銀投信投資顧問に入社。22年より三菱UFJモルガン・スタンレー証券のグローバル投資ストラテジストとして主に経済見通しの策定などを手掛ける

