マッカーサー司令部の戦犯逮捕命令

 マッカーサー司令部が、また五十九名の戦犯の逮捕命令を出した。そのなかには陸軍の畑俊六元帥、豊田副武海軍大将、皇族の梨本宮も入っている。梨本宮はむろん皇族でははじめてだが、おどろいたのは、梨本宮がそれについて外人の記者に「自分は戦争とは何の関係もなかったし、政治問題について相談を受けたことはない」と語っていることだ。

 梨本宮はたしか陸軍出の元帥だったはずだが、そもそも「戦争とは何の関係もなかった」元帥が存在するだろうか。そこになんらかの関係があったからこそ、軍人の最高位である元帥にまでなったのではないのか。

 それをいまになってめめしく言いのがれようとする。なんとも見苦しいことだ。それでも皇族の栄誉ある陸軍元帥かと言いたい。おれは梨本宮というと、いかめしい八の字ヒゲを思い出すが、これではあのヒゲが泣くというものだ。いずれにしろ、天皇のマッカーサー訪問といい、こんどの梨本宮といい、天皇一族の無責任な醜態ぶりはお話にならない。

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十二月六日――供出米にたいする苦情

 今日は一日唐臼挽きをやった。挽き屋が昨夜のうちに発動機と籾摺機を庭に運びこんでおいて、朝めし後すぐに仕事にとりかかれたので、うちの分はお昼まえにすんだ。挽いた俵かずは粳米と陸稲の糯米を合わせて四十六俵。父の話では、去年にくらべて二割がたの減収だそうだ。昼からは、ゆいで仲屋と種屋の分を手伝う。一日籾摺機のほこりをかぶっていたので、鼻の穴からまつ毛までまっ白になってしまった。

写真はイメージ ©︎Wakko/イメージマート

 こんなとき話題になるのはたいてい供出米にたいする苦情だ。今日もうちへ手伝いにきてくれた新屋の勘次が、土間に積み上げた俵をしみじみと眺めながら、

「こしとらがよ、三百六十五日クックッて働いて、やっとこうして俵につめたって、すぐ供出でもっていかれちゃうんだからな。それもよ、一俵百二十円かそこらの安い値段でさ、手間賃どころか、これじゃ肥料代もでやしねえ。だけどそうかといって供出しにゃあでいると、こんだぁ強権発動だなんていっておどかされるし、ふんとに、こんなコケでつまんにゃあ話はにゃあぞな……」

 と鉤っ鼻の洟水をすすりながらぶつぶつ言っていたが、これはなにも勘次だけではないようだ。供出となると、どこのうちも出し渋っているらしい。中には噓か本当か知らないが、調査官の眼をごまかすために俵を押し入れや縁の下に隠したり、ひどいのになると、手水場(便所)にまで隠すうちもあるという。それだけ保有米を多くしてヤミで儲けようというわけだ。おれはそばで聞いて小腹がたったので、

「だけど都会じゃいま食うもんがなくて、毎日餓死する人が出ているっていう話だから、割り当ての供出米ぐらいはちゃんと出してやんなくちゃ、それが本当ずらに……」

 と言ってやると、そばで煙管をふかしていた北上の伊之吉が、てっぺんだけ丸くくりぬいたように禿げているさいづち頭をなぜながら、

「なーに、そんなに馬鹿っ正直にだしていたら、こっちのソロバンがあわにゃあや。それによ、このさい町場のやつらをもう少しきゅうきゅうの目にあわしておいたほうがいいずら。くせになるからな……」