――その経験を乗り越えた今だからこそ、感じていることはありますか。

麻木 あの経験を通して、「体調管理も仕事の一つなんだ」と考えるようになりました。栄養バランスを意識するのはもちろんですが、プレッシャーとどう向き合うか、自分の心の状態にも目を向けるようにしています。

 当時は作品を最後まで演じ切ることだけで精一杯でしたが、今は長く仕事を続けるためには、自分自身をいたわることも必要なんだと思えるようになりました。

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©細田忠/文藝春秋

――食べられない日々が続いていたとうかがいましたが、今では食事を楽しめるようになりましたか。

麻木 はい。今ではお肉もお寿司も大好きですし、カロリーを気にしすぎるより、「食べたい」と思ったものをきちんと食べるようにしています。あの頃は、「食べられること」が、こんなにも幸せなことだとは思っていませんでした。

 病院で特別な治療を受けたわけではなく、周りの皆さんに支えていただきながら少しずつ回復して、気が付いたら自然と食べられるようになっていました。今は、穏やかな気持ちで毎日を過ごせることに、とても感謝しています。

年配の女性が涙ながらに「あなたに元気をもらえたのよ」と…

――作品が公開されると、原作ファンを中心にさまざまな反響があったと思います。当時、どのように受け止めていましたか。

麻木 人気漫画の実写化だったので、「琴子のイメージと違う」といった声はたくさんいただきましたし、「本当に私で良かったのかな」と悩むこともありました。

 当時はSNSをあまり見ていなかったので、直接誹謗中傷を目にすることは少なかったのですが、作品のニュースのコメント欄などを通して、受け入れてもらえていないことは感じていました。

 ただ、私はまだお芝居を始めたばかりでしたし、原作を長く大切にしてきた方々が違和感を抱くのも無理はないと思っていたんです。だから、つらい気持ちはありましたが、「そう思われても仕方がない」と受け止めていました。

©細田忠/文藝春秋

――作品が公開された後、ご自身の中で忘れられない出来事があれば教えてください。

麻木 舞台挨拶の時ですね。ステージへ向かうために通路を歩いていたら、一人のご年配の女性が突然、私の手を握ってくださったんです。そして涙を流しながら、「琴子ちゃん、あなたに元気をもらえたのよ」と声を掛けてくださいました。

 その姿が自分の祖母と重なってしまって、私も思わず涙が出そうになりました。それまで抱えていた不安や葛藤が、その一言ですべて浄化されたような気がしたんです。「この作品に出演して本当に良かった」そう心から思えた瞬間でした。