レシピを投稿すると、「あかり信じてるぞ」という文言から始まるメッセージがしばしばSNSで話題になる。次世代の料理家を牽引するといっても過言ではない、長谷川あかりさん(30)。7月30日には初のエッセイ集『タコ セロリ アボカド』(文藝春秋)を上梓した。
小学校6年生の時、『天才てれびくんMAX』で芸能界デビューしたものの、高校時代は仕事が激減。鬱状態を救ってくれたのが、一冊のレシピ本だった。長谷川さんが、レシピ本に見出した「救い」とは。(全4回の第2回/最初から読む)
芸能活動がうまくいかず、鬱状態に
――長谷川さんはレシピオタクとのことですが、いつから?
長谷川あかりさん(以下、長谷川) 『天てれ』を卒業したあと、中3から日出高(現目黒日本大学高)時代、仕事がなくて……少し鬱っぽくなっていたんです。悔しくて、ドラマなんかも全然見られなかった。メンタルが落ちぎみで、食欲もわかず、ご飯も喉を通らない。とはいえ食べないでいるとフラフラして倒れそうになる。
困ったなと思っていた時に、古本屋さんでレシピ本と出会いました。栗原はるみさんの『ごちそうさまが、ききたくて』を初めて読んだのもこのころです。ページをめくってみると、「これなら食べたいかも」「どんな味がするんだろう」というレシピがたくさんある。一気にミーハー心がくすぐられ、自分で食べてみたいものを作って食べるということを繰り返すようになって、少しずつ元気になっていきました。
――レシピ本の何が、元気回復の秘訣になったのでしょうか。
長谷川 2つあって、1つはシンプルにこれまで知らなかった料理に触れられること。それまで、自分が見たことのある範囲のものは全然食欲が湧かなかったけど、レシピ本に載っている料理は、「これ、どんな味がするんだろう」という好奇心を刺激してくれて、お腹が空く感覚を取り戻すきっかけになった気がします。
驚くようなおいしいものを食べさせてくれるお店に行くのはハードルが高い。でもレシピ本なら、家にいながら味の想像を思う存分巡らせることができます。世界が広がる感じがして、その時間には没頭できました。
2つ目は、レシピは再現性が高い創作活動だということです。私はそれまで料理なんて全然したことがなかったのですが、レシピ本の通りに作ってみたら、天才の味がしたんです(笑)。
当時の自分は、特に秀でた才能がない自分への無力さを感じると同時に、「こうしたら評価される」という明確な基準や答えがない芸能界で生きていく難しさを感じていました。悶々とくすぶっていた時期だったので、「書いてあるとおりにやったら必ず再現できる」というレシピの性質は、“答え”が明確で、かつ“自分にも創作ができる”という衝撃に似た満足感を得させてもらえました。そのうえ、作った料理を親や友達に食べてもらうとみんな喜んでくれるんです。
