「そんなものがつくれるか!」
和田中将にうながされて、大田が鉛筆書きの設計図を広げる。そこにはプロペラも脚もないグライダー爆弾の姿が描かれ、頭部と尾部からのびた引出線の先には、それぞれ「爆薬」「ロケット」と記されていた。さらに図面の隅には、グライダー爆弾を双発の攻撃機(一式陸上攻撃機)の機体に吊るした図が添えられている。一式陸攻で運び、敵地上空で投下するということのようだった。ここまでは、従来出された案と比べて目新しいものはない。
「それで、誘導装置は?」
やや辟易しながら、三木は訊いた。
「人間を乗せます」
大田は答えた。
「なんだって?」
三木は思わず声を上げた。大田の説明によれば、一式陸攻で敵艦の近くまでグライダー爆弾を運び、人間が乗り込み、投下する。あとは滑空しながら搭乗員が操縦し、ロケットを噴かせて敵機の追撃をかわし、一発必中で敵艦に体当りする。つまり、人間が誘導装置になるのだという。
たしかにこれなら、誘導装置の問題は一挙に解決できる。だが本来、技術は人間を助けるためのものであるはずなのに、人間の命を機械の一部品として使うような兵器をつくるのは技術への冒瀆だ、と三木は感じた。
「なにが一発必中だ。そんなものがつくれるか! 冗談じゃない」
憤然として首を振る三木に、和田中将が、「技術的な検討だけでもしてあげたらどうか」ととりなす。三木は大田に、「体当りというが、いったい、誰を乗せていくつもりだ」と疑問をぶつけた。
「私が乗っていきます、私が」
気迫に満ちた大田の答えに、三木は不意をつかれた思いがしたという。