リム パオは、兄貴のミジーの存在に憧れている。そのキスの後、2人は車に乗って帰りますが、カメラがずっとパオの表情の変化をとらえている。素晴らしいと思いました。自分が憧れた人に突然キスされた、その時の嬉しさと何とも言えない感情の入り混じった様子がすごく上手く表現されてて、なかなかこういう芝居はできないんじゃないかと思いました。
チュウ この作品で私が俳優たちに求めたのは、抑えた感じの演技をしてほしいということだったんです。黒社会の人間だったり、あるいは同性愛の人たちは、あまりあからさまに振る舞うことができないから、あまり感情を表に出さないように演技をしてほしいと言いました。セリフは非常に少ないんですけれども、視線や表情や体の動きを通しての表現が、このテーマには合うんじゃないかと考えました。
多元的な作品が作られる台湾映画の魅力
観客からは、長回しのシーンが多いのはなぜか、また参考にした作品はあるかという質問が出た。
チュウ 長回しを使ったのは、俳優の演技を考えた結果です。俳優たちが演技にすごく入り込んでいたので、あんまり切りたくなかったんです。それから参考にした作品というのはあまりなかったんですが、観た人からは『モンガに散る』(2010年)が比較的近いと言われまして、裏社会と同性愛が出てくる作品ではあるんですが、私自身は撮影時にそのことは全然考えていませんでした。
リム 監督からご覧になって台湾映画の魅力とはどういうところにあるでしょうか。
チュウ 私は、台湾映画の魅力は非常にたくさんの題材があるということだと思います。この作品をベルリン国際映画祭で最初に上映した時に質問を受けたんですが、その時にも台湾でこの映画を撮る上で何か制限はありますかという質問でした。私たちはそういうものは全く考えたこともなかったので、何だか奇妙に思えたんです。台湾ではどんなテーマでも撮ることができます。政治的なものであれ、こうした同性愛であれ、宗教的なものであれ、まあ様々な暗いテーマだったりしても、問題なく作ることができるわけです。ただ、私自身は制作の仕方にしてもテーマにしても割と伝統的な台湾映画の中にあるのかなと思います。もっと前衛的な撮り方をしている人もたくさんいます。多元的に色々なものを撮れるというのが台湾映画の魅力ではないかと思います。

