6月7日、日本未公開の台湾映画の名作・話題作を紹介する「台湾文化センター 台湾映画上映会2026」の第3回が、ユーロライブ(東京・渋谷)で開催された。今回上映されたのは、台湾映画として初めてベルリン国際映画祭の「パースペクティヴ」コンペティション部門に選出された『うなぎ』。上映後に行われたトークイベントには、本作のチュウ・ジュンタン(朱駿騰)監督が登壇。聞き手は上映会キュレーターのリム・カーワイ監督が務めた。
『うなぎ』
台北の街中に浮かぶ孤島。ゴミ焼却場で働く阿亮は、ある日、川に漂う謎めいた女性に出会う。つかみどころのない彼女との生活は、彼の心の奥に潜む孤独に火を灯していく。時間も記憶も霧のように消えていく孤島で、二人は少しずつ互いに隠してきた傷や物語を明かしていく――。現代アートシーンで活躍しているチュウ・ジュンタン監督の、長編デビュー作。シンガーソングライターのクー・ミンシュンの出演も話題。
監督:チュウ・ジュンタン/出演:デヴィン・パン、クー・ミンシュン/2024年/103分/台湾/©Static Film & Visual Art Production Co., Ltd.
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不安定で彷徨う男女とウナギの生態
リム・カーワイ(以下、リム) これまでの台湾映画の多くは、非常に叙情的であり、ストーリーの構成や展開も直線的なものが主流でしたが、『うなぎ』はそれらとは全く異なり、ユーモアとリアリティが独自の形で混ざり合って、非常にアーティスティックな表現に満ちています。まずお聞きしたいのは、なぜタイトルを『うなぎ』としたかということです。
チュウ・ジュンタン(以下、チュウ) それは私がこの作品を撮影した場所が深く関係しています。台北にある「社子島(シーヅィダオ)」というところで、二つの川が合流し砂洲になっている土地です。私はそこに2年ほど滞在し、映画の準備を進めました。その滞在期間中、地元の漁師と一緒に漁に出たのですが、その時に彼がウナギを捕まえたのです。彼がウナギをカゴから取り出して外に置くと、そのウナギは泥の上を這って回り続けていました。私はウナギという生き物に強い興味を持ち、その生態について色々と調べ始めました。
調べていくと、ウナギという魚は非常に不思議な回遊を行う生態を持っていることが分かりました。もともとはフィリピンの方にあるマリアナ海溝の深いところで卵から孵ります。そこから広大な海をずっと旅して、やがて河口から川へと入ってくる。そして川の淡水の中で生活を送り、やがて産卵の時期を迎えるとき、あるいは自らの死の時が近づくと、再び海へと出ていく。このように、海から川へ、そしてまた海へと、循環していくウナギの生態というものが、私にはとてもロマンチックなものとして感じられました。
この作品に登場する主人公の男女も、やはりこのウナギのような存在なのだと考えています。川という場所で偶然に出会い、そこで自分自身を探し、自分たちの未来がどうなっていくのか模索していく。そうした二人の不安定で彷徨うような状態が、ウナギの持つ生態やイメージと非常に強くマッチすると思いました。


