5月30日、日本未公開の台湾映画の名作・話題作を紹介する「台湾文化センター 台湾映画上映会2026」の第2回が、大阪大学会館講堂(豊中市)で開催された。今回上映されたのは、1977年に起きた「中壢(ちゅうれき)事件」を背景に、若者たちの切ない恋と自立を描いた青春映画『あの写真の私たち』だ。

 上映後に行われたトークイベントには、本作の共同監督であり、数々のヒット作を手がけてきたプロデューサーでもあるフィル・タン(湯昇榮)監督が台湾からオンラインで登壇。聞き手を務めた上映会キュレーターのリム・カーワイ監督との間で、映画の知られざる舞台裏や歴史的背景について語った。

©台湾映画上映会2026

『あの写真の私たち』
1970年代、台湾北西部の街・桃園県中壢(現:桃園市)。写真館の娘・賢英(ムーン・リー)は日々、家業を手伝い、写真の撮影と現像に明け暮れていた。幼馴染の大学生・弘国(エディソン・ソン)は、近く行われる県長選挙の不正に反対する運動に身を投じていき、賢英も次第に巻き込まれていく。そんなとき、救国団(蔣経国によって設立された青年支援団体)に招かれ、韓国のテコンドー・コーチ、キム(ジニョン)が街にやってきた。賢英は次第にキムに惹かれていくが……。
監督:フィル・タン、フランク・チェン/2025年/台湾/126分/©2025 GrX Studio Co.,Ltd. All Rights Reserved.

知られざる「中壢事件」

リム・カーワイ(以下、リム) 残念ながらフランク・チェン監督が急遽欠席となってしまいましたが、その分、タン監督にたっぷりとお話を伺いたいと思います。この映画は1977年、台湾で起こった大衆運動の嚆矢とされる「中壢事件」を描いているんですけれど、おそらく、この事件に関して台湾人もあまり知らないんじゃないかと思います。この映画で取り上げたきっかけはなんだったのでしょうか。

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『あの写真の私たち』

フィル・タン(以下、タン) 私は客家人(はっかじん・中国から移住してきた漢民族)なのですが、中壢は客家人が多く住んでいるところです。長年、客家に関するドラマや映画を作りたいと思ってきて、以前、台湾で『茶金 ゴールドリーフ』というドラマを作りました。日本でも放送されて、配信でも見られると思います。それを作った後、次はみんなの記憶を呼び起こすような物語を作りたいと思い、中壢事件を思いつきました。

*中壢事件……1977年に桃園県長選挙の投票での中国国民党の不正行為に反発した中壢の市民が、市内の警察署を焼き打ちにした事件。当局と市民の衝突で大学生1名を含む2名が死亡した。

タン 中壢事件は台湾の民主化の発展において非常に重要な事件ですが、戒厳令下の当時はほとんど報道されず、人々の記憶から薄れていました。そのため、3年かけてフィールドワークを行いました。実は中壢事件に関する公式な報告書は、去年になってようやく出たばかりなんです。私たちは現地に行って多くの人にインタビューをしたり、当事者に話を聞いて手がかりを集めました。私たちは若者の成長の物語を通して、この中壢事件を語ることにしました。