「大手ほどユルいんだよ」――被害額55億円に上る「積水ハウス地面師詐欺事件」。ビッグネームを前に逃げ出す仲間も出る中、なぜ主犯格・カミンスカスは堂々と本名で突っ込み、大手企業を騙し切ることができたのか。
地面師のパシリとして現場に立ち続けた実行犯・カトウの告白から、事件の舞台裏と主犯格の異様な「胆力」の正体に迫る。ジャーナリストの河合桃子氏の新刊『地面師連絡役カトウ: 積水ハウス55億円詐欺事件、ある実行犯の告白』(小学館)より一部抜粋してお届けする。(全3回の1回目/続きを読む)
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偽名と本名
ここに至ってなお、メンバーの一員であるカトウは詐欺が成功するとは信じられずにいた。その感覚とは裏腹に、積水ハウス社内では海喜館の土地を購入するための準備が進み、「不動産稟議書」が作成されて、各部署への確認も異様なスピードで進んでいた。
17年4月13日には中間業者のIKUTAオーナーであるAを介して、カミンスカスが積水ハウスの東京マンション事業部のC営業次長らと初対面した。場所はその当時、積水ハウスが販売を開始していたマンション「グランドメゾン江古田の杜」の販売所があった代々木だった。午前中にAが積水ハウスに「海喜館の土地を70億円で買い取ってほしい」と話を持ちかけ、同日午後、海喜館の地主側代理人としてカミンスカスが打ち合わせに合流したのである。
カミンスカスは「合同会社B3303」という会社の「代表取締役 小山操」と書かれた名刺を渡し、「不動産業者です。海老澤さんから相談を受けています」と挨拶をした。
この時、「今回は仲介には入らず海老澤さんからコンサル報酬をもらいます」といった説明をしていたようだ。カミンスカスの知人はこの会社名についてこう解説してくれた。
「B3303っていう文字並びには意味があります。BはブルーのB。小山(カミンスカス)さんは青が好きで、特に夜の水商売などの女性に自分のことを“ブルー”と呼ばせてました。数字の3303は『ミサオサン』って意味です(笑)」

