2017年5月19日、積水ハウスとの間で行われた「地主不在の内覧会」。近所の通報におびえながら南京錠を破壊して侵入し、直前で偽地主がドタキャンするという絶体絶命の窮地を、地面師たちは一体どうやって切り抜けたのか――。積水ハウス55億円詐欺事件の舞台裏、主犯格が見せた異様な度胸の正体に迫る。
ジャーナリストの河合桃子氏の新刊『地面師連絡役カトウ: 積水ハウス55億円詐欺事件、ある実行犯の告白』(小学館)より一部抜粋してお届けする。(全3回の3回目/最初から読む)
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「仲間意識」と無縁の主犯格たち
情報が一部しか共有されないなど、カトウが地面師グループに一体感を感じられなかったのは、彼が末端の位置にいたから、主犯格に軽んじられていたとの解釈もできるだろう。ただ、この商談の顛末を聞くと、主犯格とされるメンバーもまた、決して一枚岩ではなかったことが窺える。
5月17日、カトウは再び松田から同じコージーコーナー赤坂店へ呼び出され、長谷川とともに向かった。だが、約束の時間になっても野村は現れない。野村だけでなく松田の電話さえコールが鳴らず留守番電話に繋がってしまう状況だった。カトウはすぐに悟った。
「野村も兄さん(松田)もパクられたな」
地面師たちの携帯電話が直留守になる場合は、逮捕されている可能性が高いと聞いていた。