そうは言っても先日、面談した高齢男性と女性も約束の場に現れたため、逃げるわけにもいかない。カトウは長谷川と共に赤坂エクセルホテル東急の喫茶室に入り、4人で着席した。

「野村さんが来てから話を進めましょうか」と言ったカトウだが、一向に野村は現れない。そんななか、ふいに対面して座っていた高齢男性が、奥のテーブルに行きコソコソと話を始めた。その相手は、なんとあの内田マイクだった。

「金を騙し取ろうとしている」

 カトウはそこで再び悟った。

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「これはマイクさんが、土井会長の知らないところで長谷川を利用し、金を騙し取ろうとしているんだな」

 カトウは以前から、地面師の間で内田に悪評があることは聞いていた。この話に下手に乗ると、自分も何かトラブルに巻き込まれ身が危険だとも思った。

 一見、チームプレーに見えて仲間意識はない。自分が一番に金を多く騙し取ろうとする。それが地面師のやり方なのだ。特に内田はその手の「行儀が悪い」とされていた。

 こうなると、カトウが頼る相手は土井しかいない。すぐさま土井に連絡した。

「松田と連絡が取れません。五反田の物件で、松田に言われて人に会っていたんですけど。マイクさんも離れた席にいたから、自分じゃ手に負えないんで、自分は出てきました」

 そう伝えると、土井は言った。

「松田の件はこっちで調べる。内田マイクがいた件はわかったから、こっちの方でも確認してみるよ」

 さらに続けて、「話は変わるんだけど、今日の夕方、地主(長谷川)を段取りすることはできるかな」とあっさり別の商談の話になったのだ。