「近所の人がいつ通報するかもわからない」

 内覧会に長谷川を立ち会わせることの「リスク」への対策も必要になった。内覧会中に警察が駆けつけるかもしれないし、なにより館について何も知らない長谷川に積水ハウスやIKUTAのオーナーであるAから具体的な質問をされたら、必ずボロが出るからだ。

 内覧会は5月19日の予定となったが、前日に土井とカミンスカスは、長谷川が「病院に行く」という体で内覧会に参加できない旨の委任状を作ることにした。その委任状作成と長谷川の代わりに現地で立ち会う依頼を受けたのが、港区虎ノ門付近の某弁護士事務所である。この弁護士は地主が偽者だとは知る由もなかったとされる。あらかじめ付け替えておいた南京錠の鍵がこの日、弁護士に渡された。

 内覧会当日、長谷川の代わりに弁護士がやって来ることは積水ハウスやAにとって予想外だったはずだ。地主のドタキャンは異常事態である。それでも、委任状を持った弁護士が現れたのであればそれを信じるほかなかったのかもしれない。

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地面師たちに狙われた「海喜館」の土地(写真:筆者提供)

 カミンスカスは内覧会で海喜館内に約1時間滞在した。積水ハウスとA側、さらに積水ハウスが依頼したであろう解体業の測量士ら10人で中へ入った。

「昼間の人通りが多いあの場所で、10人もの人間がゾロゾロ入ったら当然目立つ。近所の人がいつ通報するかもわからない状態でひとりで立ち回るなんて、よほどの度胸がないとできないこと。

 小山さん自身も後日『焦ったよ』なんて言ってたけど、そんなことを堂々とやれるアイツはやっぱ宇宙人だよなって、後に土井会長とかと話したもんです」(カトウ)

 つまり、地面師メンバーで館の内部を見たのはカミンスカスひとりである。館の内部の様子について私は本人に手紙で聞いた。

《中を見るとゴミだらけだったので土足で約2時間程内覧しました。電気は通っていましたというか1ヶ所電灯がついていました。》(25年4月10日消印、積水ハウス発表の「総括検証報告書」には内覧時間が「1時間」と記載されているが、原文ママとした)

《中はざっと言うと引っ越しした後の様な感じで、必要な物は持ち出し、必要でない物が置いている感じでした。二階にはフトンが一組敷かれていました。(略)菓子箱の内に不動産屋の名刺が300枚くらいありました。私の名刺もありました。》(25年5月1日消印)