カトウは長谷川と共に土井に指示された水天宮のロイヤルパークホテルに向かった。このホテルは土井のお気に入りで、自宅とは別にここを根城にしていた。長谷川を呼び出したのは、積水ハウスとの件の中間業者であるAと面談をするためだった。そのためカミンスカスもおり、長谷川をカミンスカスに引き渡すようにも言われた。

 当時の土井と交流があったある人物はこう言う。

「土井は四つ星ホテル系が好きでしたね。このロイヤルパークも長期滞在してました。その前によく使っていたのは港区白金台にあるシェラトン都ホテル東京でした」

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 カトウは長谷川をカミンスカスに引き渡し、ロイヤルパークホテル前の喫煙所でタバコを吸いながら待機していた。間もなくしてカミンスカスと長谷川が戻り、カトウはあらかじめ土井から受け取っていた3万円のうちの1万円を長谷川に渡して帰宅した。

 内田、土井、カミンスカス。3人の主犯格は皆、長谷川やカトウを使いながら、本当の思惑はそれぞれ別のところにあったことが窺えるのだ。

地主不在の“内覧会”の裏側

 メンバーそれぞれの思惑が交錯するなか、積水ハウスとIKUTA HOLDINGSによる本決済に向けた動きも進んでいた。

 積水ハウスは本決済前に海喜館の「内覧会」と称した内部見学を強く望んでいた。その実施にあたり、地面師グループではあらかじめ色々と準備が必要だった。そもそも、中に入るための鍵がない。まずは館内部に侵入するための門の鍵の破壊と作り直しである。これについてカトウはこう言った。

「いつやったのか知らないけど、マイクさんの配下の者が行ったと聞いている。正面玄関は人目につくからということで、目黒川沿いの勝手口の扉を破壊し、いかにも古い感じに施した南京錠に事前に付け替えたと聞きました」