2019年8月10日の朝、未成年者の性的人身取引などの罪で起訴され勾留中だったジェフリー・エプスタイン(当時66歳)が、収監されていたアメリカ・ニューヨーク市の拘置所(メトロポリタン矯正センター)で死亡しているのが発見された。
ニューヨーク市の検視当局により自死と断定されたものの、その死には不可解な点も多く、現在に至るまで他殺説や陰謀論が根強く囁かれている。関連文書や調査報告、看守の記録などが度々追加で公開され、社会的な関心が持たれ続けるこの事件の裏で、一体何が起きていたのか?
事件を追ったジュリー・K・ブラウン記者による全米ベストセラー『ジェフリー・エプスタイン 億万長者の顔をした怪物』(訳 依田光江/ハーパーコリンズ・ジャパン、2022年刊行)より、一部を抜粋して紹介する。(全4回の4回目)
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死因は首を吊った自死と発表
ワシントン・ポストは(2019年)8月15日、エプスタインの首には複数の骨折があり、損傷部位が自分で首を吊ったというより、絞殺を疑わせるパターンを示していると報じた。折れた骨の1本は舌骨で、これは高齢者の縊死体によく見られるが、一方で絞殺の兆候でもある。
1日後、ニューヨークのサンプソン主席検死官が、エプスタインの死因は首を吊った自死であると発表した。エプスタイン側弁護士はこの判定をただちに非難し、政府を相手取って死亡時の房周辺の監視映像を入手する訴えを起こす用意があると言った。
まもなく、房の外の廊下を撮影した映像が破損しているとの情報が流れてきた。
バーデン博士は、エプスタインの傷は人の手で首を絞めたときのものとの付合性が高く、朝6時半に発見されたときの少なくとも45分以上前からその状態にあったと考えられると述べた。
エプスタイン側のマーティン・ワインバーグ弁護士は、「死後45分だろうと、2時間、4時間経っていようと、房のなかを発見されたときのままにしておくべきだった。彼を移動させようとする試みがあったために、その結果、現場を復元して彼が自殺したのか、ほかの原因で死亡したのかを見きわめることが困難になった」と述べている。
エプスタインを発見したときの写真は撮られていない
バーデン博士は私に、刑務所側がエプスタインは自分で首を吊ったのだと、つまり犯罪性はないと考えたのだとしても、エプスタインの身体を移すべきではなかったし、房はただちに犯罪現場として保存されるべきだったと言った。犯罪かもしれないと疑っていれば写真を撮っただろうし、エプスタインがどのように死んだのかを知る手がかりとなっただろうと。だが、エプスタインを発見したときの写真は撮られていない。
