当初は自殺だと断定できなかった
さらにバーデン博士は、実際に検死に立ち会った病理学者クリスティン・ローマン博士も、当初は首吊り自殺だと断定できなかったことを初めて明らかにした。
バーデン博士によると、首を吊って骨が折れることはまれであり、ましてや複数の骨が折れることは考えにくいという。「このような骨折は自身による縊死では非常にめずらしく、第三者が手を下した絞殺ではるかに起こりやすい」と博士は述べ、眼球にあった出血も絞殺によく見られる現象だとつけ加えた。
エプスタインが使用したとされる首吊りの道具はオレンジ色のシーツで、房の床に落ちていた。発見した刑務官によると、エプスタインはシーツを首に巻き床に膝をついた状態だったそうだ。シーツの端は寝台の上段に結んであった。
バーデン博士は言った。
「発見されたとき彼は完全に息絶えていた。死後硬直がすでに始まっていた」
のちに撮影された房の写真では、床と寝台の下段に散らばるシーツの量が異常に多いように見える。上段のマットレスは床にあり、上段には洗面用具などの小物類が並び、搔き回された感じはない。
床には睡眠時無呼吸症候群の治療器らしい、ワイヤーやコードのついた器械が写っている。エプスタインが首を吊ろうと思ったら、シーツで結紮具を自作するよりも治療器のコードのほうが簡単だったのではないかとの指摘がある。
「巨大な虫が両腕を…」
エプスタインは、看守によってシャワー室に1時間閉じ込められたとうったえる手書きのメモを残していた。黒焦げの食べ物を出されたとも書いている。
「巨大な虫が両腕を這う 不快だ!!」とのボールペンの文字もあった。バーデン博士は、そもそも自殺監視対象者の手が届く場所にボールペンがあってはいけないと指摘した。