刑務官ふたりは眠っていた

 当局はその後、夜勤に就いていたトバ・ノエルとマイケル・トーマスの刑務官ふたりを、虚偽記録の作成と連邦政府を欺こうとした共謀の罪で告発した。当局によると、監視カメラの映像で確認したところ、ふたりは眠っていたそうだ。

 バーデン博士は、刑務所での死亡事例を40年間調査してきたなかで、刑務官ふたりが同時に眠ったケースは初めてだという。彼が見た房の写真には、窓の格子や寝台に結ばれた複数の首吊り布が写っていた。博士は、あの寝台の高さでは首を吊るのに充分な力はかからなかっただろうと述べた。

 さらに、シーツの傷はエプスタインの首の中央部にあり、自死の際によく見られる顎の骨の下ではなかった。

ADVERTISEMENT

 著名な法医学者シリル・ウェヒト博士もバーデン博士の所見に同意する。ふたりともサンプソン主席検死官の見立ては拙速だったのではないかと指摘したが、エプスタインの死因についてそれ以上の調査はおこなわれなかった。「当局が自殺と判断すれば、不審死のときのような証拠集めはしない」とバーデン博士は言う。

 バー司法長官は、自殺であることは明白としたうえで「不手際が次々に重なった」ことを認めた。

黒塗りにされた「エプスタイン・ファイル」と、ジェフリー・エプスタイン元被告 ©EPA=時事

エプスタインの弟の主張

 だがエプスタインの弟マークは、兄が自殺ではないとの確信をますます強めていた。

「終身刑が決まったのだったら、自ら人生を終わりにしたこともありえると思う。だが、兄には保釈査問会が控えていたんだ」

 彼は、2008年に逮捕されたあと兄は更生し、今回の逮捕は先走ったメディアがつくりあげた不当なものだと主張した。ご想像どおり、あの記事を書いた私は彼の気に入りの人物ではない。

 詳細は明かさなかったが、彼は多くの人が兄の死を望んでいたと語った。

「兄ジェフリーはおおぜいの人についてたくさんのことを知っていたから」

 尋問を受けなかった人のなかに、以前にエプスタインと同房だった元汚職警官のニコラス・タルタリオーネがいる。タルタリオーネの弁護士、ブルース・マーケットは私に、エプスタインの死になんら不審な点はなく、彼の死は自殺でまちがいないと言った。

 事件にかかわりのあるどの弁護士よりもエプスタインのことをよく知っているであろうブラッド・エドワーズ弁護士も、エプスタインは自分で命を絶ったと考えている。

 だが私には、法を超越した存在のようにふるまうことに人生のすべてを費やしてきたエプスタインが、まだ刑が確定したわけでもない初期の段階で簡単にあきらめてしまうとはちょっと考えにくい。彼はすでに刑務所のシステムを操り、受刑者に金を払って自分を護らせ、新しい弁護士を次々と雇っていたのだ。

最初から記事を読む 14歳少女に「上玉でしょう?」「綿のショーツを履くように」性行為を拒めば罵倒…未成年を支配したエプスタインの“狡猾な手口”

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。