戦争が与えた「心の傷」をいろんな角度から考えたい
――戦後とはいえ、子ども時代の記憶ですもんね。楽しい瞬間もあって当たり前ですよね。
ホリーニョ はい。でも、僕もそう思って「収容所での暮らしは、もちろん苦しいことばかりだったと想像しているのですが、楽しかった記憶もあったりしますか?」と聞いたら「ありません」ってきっぱりおっしゃられて。やっぱり相当過酷で、生き延びるだけでもハードな状況だったんだろうなっていうことが伝わってきました。
――なるほど。他人が勝手に決めつけていいことじゃないですね。
ホリーニョ ハルキさんや静子さん、美代子さんといった、沖縄戦を経験した方々の話を聞いていて思ったんです。戦中・戦後のトラウマや心の傷について、実はあまり語られてきていない側面もあるのかもしれないって。もちろんすでにたくさん語られてきてはいるんですけど、語らなかった人もいるんだと。
沖縄戦の死者は住民の4人に1人と言われています。当時、みんなが家族を亡くしていて、たくさんの亡くなられた方が地面に横たわる中を走って逃げた経験のある人もいる。戦争が終わってからも当時の記憶を語ること自体が、非常に苦しいことだったんだと思います。
家族にも口を閉ざして「悲惨な歴史を忘れて復興のために前を向こう」って傷を抱えながら生きてきた沖縄の方がたくさんいらっしゃる。だから僕のカラー化写真を見て「自分の母親は、おばあは教えてくれなかったけど、こんな体験をしたのか」という感想を抱く戦後世代の方が多いのかもしれないですね。
戦後81年経って当時を生きた方々が少なくなって、かつての戦争の傷との向き合い方は変わってきていると感じます。沖縄戦に限らず、たとえば「戦争加害者の心の傷」についても最近少しずつ語られ始めていますよね。軍事作戦で人を殺して日本に帰ってきた人が、PTSDやトラウマに苛まれ、家族に暴力を働くようになってしまう。そんなDV被害を受けた方々による語りも増えてきています。
僕自身もまだまだ勉強不足なのですが、カラー化写真で歴史を知るきっかけを作りながら、その向こう側にある傷について興味を持つ人を増やしたい。だから精神科医の蟻塚亮二さんの本『沖縄戦と心の傷』を読んだり、今年9月に劇場公開される塚本晋也監督の映画『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』の原作を読んだりして、戦争が人に与えるトラウマなどについて勉強しています。これまで人々が負ってきた戦争の傷について、いろんな角度から考えることが必要だと感じていますね。
――その必要性は近年さらに高まっているような気がしますね。
ホリーニョ そうですね。静子さんたちご家族との別れ際に「こんな時代だから、しっかり伝えてくれたら嬉しい」と言われたんです。沖縄戦を経験されているから今の時代に漂う「戦争の空気」に危機感を持たれて、そう言ってくださったのかなと思います。
これからも僕はカラー化写真やこういった発信を通じて、特に沖縄の歴史に触れるきっかけの少ない沖縄県外の方々に、興味関心を持ってもらうきっかけ作りをしたい。そしてお世話になっている沖縄に恩返ししていきたいなと思っています。大阪から沖縄に行って、沖縄の方々とお話しして自分も学んでいく活動を続けます。
生成AIを導入して着色の精度はかなり上がっているので、過去にカラー化した白黒写真をもう一度カラー化して、皆さんに見ていただくということもやっていきたいですね。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。





