あの日の真実が打ち明けられた瞬間
私は、その答えを知っている。2024年の某日、帝国ホテル。
コーヒーカップが触れ合う軽やかな音が響く優雅な空間で、原先生は周囲に聞こえぬよう声を潜め、私にこっそりと「あの日の真実」を打ち明けた。それは、長年にわたり喉の奥に小骨のように刺さっていた棘を、ようやく抜き取るような告白だった。
《このことは、三上さんとの約束通り、僕が死ぬまで墓に持っていく。……だけど、僕が死んだら、君の好きなようにしていいよ》
それは、「歴史の真実」という重いバトンが、私に託された瞬間だった。1945年4月6日、12時40分頃。春の瀬戸内海は、どんよりとした曇り空に覆われていた。
徳山沖に停泊する戦艦「大和」の右舷後部海面に、1機の零式水上偵察機がしぶきを上げて着水した。鹿屋から飛来した、草鹿と三上を乗せた機体である。
2人は舷梯を伝い、巨大な鋼鉄の壁を登っていく。彼らを待っていたのは、静寂だった。
案内された長官公室では、第二艦隊司令長官・伊藤整一中将を始め、4〜5名の幕僚たちが、石像のように微動だにせず座っていた。部屋の空気は、完全に凍りついている。
草鹿は、今回の海上特攻作戦が決定した経緯を、簡潔に説明した。
「……したがって、空からの菊水作戦、そして陸軍の総反撃に呼応し、海上特攻隊もまた沖縄へ突入。全力を挙げて敵艦船、および輸送船団を撃滅する。これが、豊田長官(連合艦隊司令長官・豊田副武大将)のご決心です」
空調の低い唸り音だけが部屋に響く。伊藤は身じろぎもせず、卓上に広げられた作戦図を、ただじっと見下ろしている。その視線は、沖縄への道のりを通り越して、はるか彼方の「虚無」を見ているようだった。
「……参謀長」
伊藤は目を合わさず、ゆっくりと口を開いた。
「この作戦の目的、範囲、そして成功の算を、連合艦隊はどう考えておるのか」



