連合艦隊からの“求め”
問いかけは淡々としていたが、それは鋭利な刃物のように草鹿の急所をついた。目的も、行動範囲も、成功の見通しも、あるにはある。だが、それは建前でしかない。本当の目的は何か。連合艦隊は自分たちに何を求めているのか。
この会談の場にいる誰しもが、真の目的を理解していた。わざわざ「海上特攻隊」とまで銘打っている最後の作戦である。やるべきことは明白であった。「要するに死んでもらいたい」「今から沖縄に征って華々しい最期を飾ってくれ」。……だが、そんな言葉を口にすれば、この作戦が「作戦」としての体裁を取り繕っている所以を、自ら放棄することに等しい。
草鹿は二の句が継げなかった。連合艦隊参謀長が説明を求められ、核心部分を言い淀むその態度こそ、この作戦の正当性を証明できない何よりの証拠だった。重苦しい沈黙が、再び場を支配する。1秒がまるで無限に感じられるような、窒息しそうなほどの時間。
三上は、この耐え難い空気に我慢ができなくなった。上官である草鹿がこれ以上、答えに窮する様を見ていられなかったのだ。
「連合艦隊司令部の考えを申し上げます」
伊藤の視線が、すっと三上に向けられる。
「本作戦は、大和の沖縄突入によって敵を破砕し、しかる後に……」
自らの言葉が空回りしていくのを感じる。それでも三上は止まることができなかった。
「連合艦隊では、『大和』は最後に沖縄にのし上げて主砲を撃ちまくり、弾丸が尽きれば乗員は、陸戦隊として敵陣へ斬り込むことまで考えています」
言い放った瞬間、三上はハッとした。幕僚たちの顔に、ありありと「軽蔑」の色が浮かんだからだ。世界最強の46cm砲を持つ戦艦を、ただの固定砲台として砂浜に座礁させ、最後は水兵に銃剣突撃をさせろと言うのか。それが、海軍の頭脳が集まる日吉の司令部が考え出した結論なのか。
伊藤は、ゆっくりと顔を上げた。その目には、怒りを超えた底知れぬ哀しみと諦念が宿っていた。
おもむろに、原先生はカバンから1冊の取材ノートを取り出した。


