激しい怒りに満ちた一言

「馬鹿を言うな!!」

 その語気は、三上がかつて聞いたことがないほど荒く、激しい怒りに満ちていた。

「連合艦隊司令部から督戦されなくても、この作戦は二艦隊で充分にやる。貴様はもう帰れ」

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 三上は、共に死ぬことでこの作戦における贖罪を果たそうとした。だが、現場の山本から見れば、それは「安全地帯にいる組織の人間」が考える安っぽい同情に過ぎない。三上は自身の心根の浅さを見透かされたのであった。

 山本は踵を返して立ち去った。その背中は、「二度と俺たちの前に顔を見せるな」と言っているかのようであった。呆然と立ち尽くしていた三上は、草鹿に促され、よろめくように歩き出した。一歩、また一歩。足が、鉛のように重かった。舷梯を降り、波に揺れる零水偵(編集部注:零式水上偵察機)に乗り込むまでの記憶は曖昧だった。ただ、体中にまとわりつく「後ろめたさ」だけが、彼の心を支配していた。

 15時、「大和」に接舷していた各艦の内火艇が、司令や幕僚、艦長らを載せて一斉に帰艦した。それと同時に、草鹿と三上を乗せた零水偵が、エンジン音を轟かせて離水した。

 巨大な「大和」の威容が、高度を上げると共に小さくなっていく。ふと遠くの方に目をやると、瀬戸内の桜が咲いているのが見えた。

(あぁ、桜が咲いている。今度はいつ見られるか分からない、最後の桜だ……)

 三上は感慨にふけり、しばしの間、静かにむせび泣いた。

最初から記事を読む 「私の独り言だと思って聞いてください。どうかこれは、記録に一切残さないでほしい」連合艦隊参謀が取材で明かした…新証言で明らかになる「一億総特攻」の残酷な真相とは