過酷な労働環境や組織ぐるみの勤怠改ざん、そして過大な責任――。真面目で「ノー」と言えない性格の50代中学校教員は、追い詰められた末になぜ校内での盗撮行為へと走ってしまったのか。その背景には、就職氷河期世代ゆえの構造的問題と、身勝手な加害行為を正当化する「認知の歪み」が存在していた。
性犯罪へと駆り立てる社会と個人のメカニズムを、西川口榎本クリニック副院長として様々な依存症治療と向き合ってきた斉藤章佳氏の新刊『校内盗撮』(集英社インターナショナル)より一部抜粋してお届けする。(全3回の2回目)
◆◆◆
明らかになった「生きづらさ」
田中氏の自尊感情の低さや自信のなさは「エゴグラム」にも表れていました。
エゴグラムとは、対象者の対人関係のパターンや生きづらさを客観的に分析・説明するために用いられる性格分析です。当クリニックでも心理検査の一環として、このエゴグラムを取り入れています。
エゴグラムは、主に以下の5つの指標(自我状態)から構成されています。
・CP(批判的な親):厳格な父親のイメージ。他人に対して多罰的であり、批判的な部分を指します。倫理的、道徳的、理想の追求といった特徴があります。
・NP(養育的な親):やさしい母親のイメージです。思いやりがあり、やさしく、世話好き。受容的。これが高すぎると過干渉、過保護になることもあります。
・FC(自由な子ども):自分を解放できる人はこの数値が高く、逆に自分を押さえ込んでしまう人は低くなります。
・AC(順応した子ども):周囲の顔色をうかがって自分の行動を決める、周りに合わせる傾向を示します。素直、協調性、従順、自己犠牲といった特徴があります。
・A(大人の部分):冷静かつ客観的に状況を判断する力を示します。
田中氏にエゴグラムを実施したところ、AC(順応した子ども)の数値が異常に高く、A(大人の部分)とFC(自由な子ども)が極端に低い結果が出ました。
これは、以下のような彼の生きづらさを如実に表しています。
