逮捕され、職や家を失う「社会的な死」が待っているにもかかわらず、なぜ盗撮行為をやめられなくなってしまうのか。身近なスマホを使った手軽な加害行為は、過酷な現実やストレスから一時的に逃避するための身勝手な「鎮痛剤」へと変わっていく――。
盗撮にのめり込む心理的メカニズムと依存症の真の恐ろしさについて、西川口榎本クリニック副院長として様々な依存症治療と向き合ってきた斉藤章佳氏の新刊『校内盗撮』(集英社インターナショナル)より一部抜粋してお届けする。(全3回の3回目)
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盗撮がもっとも身近で魅力的なストレス対処法だった
すでに述べたように田中氏は、長時間の残業や労働時間の改ざんといった極度のストレスに晒されていましたが、適切なストレスコーピング(対処法)を持ち合わせていませんでした。
唯一、趣味らしい趣味といえるのは、市民サークルが主宰する和太鼓グループに年数回、顔を見せるくらいでした。
ストレスは「とにかく耐えるもの」という根性論で、誰にも弱みや悩みを打ち明けないまま、なんとか現実に対処しようとしていたのです。
そんな彼にとって、盗撮はもっとも身近で魅力的なストレス対処法でした。
盗撮をする際の「バレたらどうしよう」という緊張感と、うまくいったときの安心感。そして、スマホに記録された無防備で無垢な児童たちの姿。
そこで得られる強烈な高揚感や達成感は、他では到底得られないものでした。
