脱獄の日

 1955年5月11日深夜、出窓の鉄格子を切り東京拘置所から脱獄決行。布団に人が寝ているようなふくらみを残して逃げていたことから事が発覚するのは翌朝で、独房には書き置きが残されていた。

〈御託びの申し上げようもありませんが、しばらくの間、命をお助けください〉

 菊池は拘置所の屋根に張られた鉄条網を金ノコで切りながら敷地の外に出ると、最寄りの東武伊勢崎線の小菅駅(東京都足立区)まで走り、東北本線に無賃乗車。車内で検札に引っかかったため、走行中の列車から飛び降り、兄と落ち合う。

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 とりあえず一足先に兄が実家の様子を見に行くことになったものの、近くまで来たところで張り込み中の警察に見つかり拘束。兄が全てを白状したことで、菊池の大捜索が始まった。

 菊池は市羽村の山中を逃げ回り、脱獄から11日目の5月22日夕方、母に会いたいがあまりに自宅に戻ったところで逮捕される。数日間食べ物を口にしておらず、よろよろと歩くのが精一杯の状態。それでも、菊池は土下座をして刑事に懇願した。

「頼む。一目でいいから、おかやんに会わせてくれ」