「機能」「品質」だけで勝てる時代は終わった
オーナーが乗降時にクルマと接するたびにフロントマスクが視界に入ることを考えれば、そのデザインが所有している満足感に大きく影響するのは当たり前のことだ。また走行中は、対向車や前走車のドライバーにフロントマスクを見せつけることになる。印象的であれば、「あのクルマいいな」とか「次はあのクルマが欲しい!」という気持ちにさせることにもつながる。
日本車メーカーでは、マツダが「魂動デザイン」をブランディングに活かすなど、欧州車の伝統に対抗できる環境も整ってきた。だからこそのハンマーヘッドなのである。
トヨタは2020年から全チャンネル全車種販売を導入したことで、車種やデザインによるディーラーの棲み分けがなくなった。これも、各車種の商品力を上げる必要性が高まった理由だろう。その結果、一部で話題になるほど納期が延びてしまう人気となり、受注停止も珍しくないほどトヨタ車は日本市場で高い人気を維持し、世界中でも高い評価を受けている。
日本を含め先進国の自動車市場が成長市場から成熟市場へと変化した現在、万人受けするクルマは歓迎されない。デザインは好き嫌いが分かれるくらいでなければ、強い支持を得られることもない。世界一の販売台数を誇るトヨタにとって、品質面は何の不安もないだろう。しかしEVや新興市場での販売競争は、燃費や信頼性、安全性といった機能面の評価だけでは勝負できない。
攻めこそ最大の防御という言葉もあるように、常に弱点を克服するような企業姿勢でなければ、中国や米国、欧州の自動車メーカーと渡り合うことはできない。だからこそ魅力を高めるにはデザインであり、走りを追求することが重要になる。そう考えると、トヨタがハンマーヘッドやGAZOO Racingといった打ち手を講じていることは時代に応じた必然的な戦略なのである。
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