彼自身は、こうした板挟みの状況を明確に言語化できませんでしたが、それでも「盗撮をやめたい」と切実に訴えていました。

 子ども同士の校内盗撮から見えてくるのは、男尊女卑がいまだ根強い、日本社会の縮図そのものでした。

「男は強くあれ」という呪い

 この誠也さんの言葉から感じるのは「男は強くあれ」という規範です。呪いといってもよいかもしれません。

ADVERTISEMENT

 2025年10月26日に『NHKスペシャル』で放送された「加害の“扉”が開くとき子どもを守るには」という番組があります。

 私も専門家のひとりとして取材協力・出演をしたのですが、番組内で成人の性暴力加害者に「いつ加害の扉が開いたのか」と振り返ってもらうコーナーがありました。

 そこで明かされていたのは、彼らの多くが、小学生や中学生というきわめて早い段階で問題行動を始めていたことでした。

 そして、彼らが幼少期からとらわれていたのが、この「強くあれ」という価値観でした。

 他人より勝ること、競争に勝つこと、弱いものを支配すること。競争や勝ち負けを過剰に重んじるこの価値観は、いわゆる「有害な男らしさ」の一端です。

「有害な男らしさ」とは、伝統的な「男らしさ」の規範が、自身や他者に悪影響を及ぼす負の側面を指します。