突然のセカンドオピニオン

「がん告知」を受けたあの日、タクシーで家に帰ったのか? 電車を使ったのか? いまだに思い出せません。

 家族になんて言おう……。観劇の帰りにそればかり。子どもたちにはまだ話したくない。そんなことも考えていました。

 我が家は5人家族。長男は26歳、すでに社会人として働いていて一人暮らし。親に対して、間違っていると思えば「その考えは間違っている」と堂々と反論してくるので議論になることもしばしば。昔は単なる反抗心のなせる業かと思っていましたが、経験を積み、親を越えようとしている……いや、すでに越えている部分もあります。

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 次男は社会人1年生の22歳。性格が私に一番似ていて底抜けに明るい。口から生まれたような子で、いつもしゃべっているか歌っています。すべての難関を「面接」でクリアしてきた人生も私と同じ(笑)。我が家のムードメーカーです。

 三男は17歳。口数が少なく、かたくなな高校2年生。いろんな壁にぶつかりながら青春、真っただ中。

 そして。他局ながら同期の妻です。

 さすがに妻に黙っているわけにはいきません。子どもたちがいないことを確認して、

「ますみごめん、病気になっちゃった……。がんになっちゃった。悪性リンパ腫っていう血液のがんなんだ」

 台所で洗い物に立つ妻に向かって私は話しかけました。

 振り向いた妻の第一声は、

「そんなのウソよ。ありえない。間違ってるんじゃないの? すぐにセカンドオピニオンを受けてください。お医者さんを探してね」

 とても妻らしい。即断即決!

 その後、食卓に座って2人で話をしました。私は不覚にも泣き出してしまいました。

 3か月前に、三男が急に、

「今年の冬、スキーに行きたい。スキーに連れて行ってくれないかな」

 と言い出していたからです。

 私は喜びました。三男が自分から何かをしたいとリクエストしてくることはめったにありません。しかも私は大学時代スキークラブに所属していたので、スキーは1級。

 長男・次男とは、スキーを教えるために一緒に行ったことがありましたが、三男とは一度もスキーに行ったことがありませんでした。

 ところが、思いもよらぬ「がん告知」によってすべて駄目になってしまったのです。せっかく楽しみにしている三男になんと謝ればいいのか。二人旅なら、今の気持ちをいろいろ聞けたはずなのに……あまりにも自分が不甲斐なく、妻の前で涙が止まらなくなってしまいました。

「来年行けばいいじゃないの」

 そう言って妻が励ましてくれましたが、この年にスキーに連れて行ってほしい何かが息子にはあったのではないか、と思うと今でも悲しくなってしまいます。

 一方、妻が提案した「セカンドオピニオン」は思ってもいませんでした。

 やっと、ここから入院をして本格的な治療が始まるというのに、また別の病院で診てもらおうというのか?