教諭Xの矛先は、当事者だけに留まらなかった。事件に全く関与していないAくんを含む部員全員に対し、「連帯責任」として毎朝の草むしりなどの奉仕作業を長期間にわたって強制したのだ。

 自分が何も悪いことをしていないにもかかわらず、友人が目の前で激しく痛めつけられ、自分も理不尽な罰を科され続ける。連帯責任という名の見せしめ作業が続く中で、Aくんの表情からは次第に笑顔が消えていった。同時に、教諭Xに対して強い恐怖と嫌悪感を募らせていった。

 しかしAくんが3年生に進級すると、担任に就いたのは、ほかでもない教諭Xだった。

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 1学期の間に、Aくんは母親に「X先生が嫌だから、クラス替えをしてほしい」と複数回こぼしていた。1学期はどうにか乗り切ったものの、事件は夏休み明け初日に起きてしまった。

Aさんは活発で釣りが好きだった

「夏休み明けだからといってストレスを避けるようなことはせず、いつも通りの指導をした」

 内閣府の「自殺対策白書」でも明らかなように、夏休み明けの9月1日前後は、18歳以下の自殺が1年で最も急増する危険な時期である。文部科学省からも全国の学校に対して警戒を呼びかける通知が出されており、同校の校長も始業式の日の職員会議で「生徒の心に寄り添う指導をするように」と全教員に注意を促していた。

 だが、教諭Xはその注意を気に留めてはいなかった。「夏休み明けだからといってストレスを避けるようなことはせず、いつも通りの指導をした」と後に法廷で証言した通り、教諭Xは初日から容赦なく生徒へと襲いかかった。

 2018年9月3日、始業式。Aくんは夏休みの宿題のうち、数点を学校に持参するのを忘れて登校した。とはいえ夏休み途中の出校日に提出すべき宿題はすべて提出しており、持参し忘れた宿題についても、事前に自宅で完成させていたものが大半だった。

 それでも、教諭Xの威圧感を知るAくんは激しく動揺していた。休み時間、同級生に対して「宿題忘れた、やべーよ」と焦りを口にし、不安そうに落ち込んでいたという。

 クラス内で宿題の未提出者は6人いた。教諭Xはまず教室で6人を一括して叱責したのち、Aくんと別の男子生徒の2人だけをピンポイントで職員室へと呼び出した。