職員室内に、教諭Xの大声が怒号となって響き渡った。

 教諭X自身が裁判で「バスケ部員を廊下で叱責した声量が10段階評価のうち10ならば、このときは8くらいの声量だった」と認めたその声は、職員室の外にまで漏れ出るほどの威圧感を伴っていた。「自分の中でどうも思わないのね!」「ゲームばかりやってるからダメでしょうが!」と、Aくんを責める言葉が続く。

 Aくんは提出できなかった宿題の中で、唯一手をつけられていないものに「数学のプリント集」があった。Aくんは正直に「紛失してしまった」と教諭Xに申告した。

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 教諭Xは「どうしたらいいの。そこはもう考えなさいね」「今日が締め切りだから、今日しっかり終わらせて持って来ないと」と突き放した。

「今日中に持って来い」という絶対に不可能な指示

 しかし、実はこの日、数学の教科担当教諭は休みをとっており、学校を欠勤していた。つまり、Aくんがプリントの宿題を提出しようとしても、プリントを受け取ることすら不可能な状況だったのだ。

 当日の提出など絶対に不可能な状態であるにもかかわらず、教諭Xは「今日中に持って来い」「どうするか自分で考えろ」と伝え、強い負荷を強いたのである。

 のちの裁判で、教諭Xは「数学の教員が休みであることは授業変更でAくんも分かっていたはず。だからどうすればいいか自分に相談してくると思っていた」「友達のプリントを写せば当日中に提出できたはず」などと証言した。しかし、大声で怒鳴りつけられて極度の恐怖状態に陥っている生徒が、当の教師本人に相談するハードルは極めて高い。

 判決もこの点について、「Aから見れば相談できるような状態にあったとは言い難く、全体としてみればAに対し、不可能を強いるものであった」と教諭Xの主張を退けている。

 さらに教諭Xの暴走は、宿題の叱責にとどまらなかった。怒声の矛先はそのまま、生徒の将来である「進路指導」へとすり替わっていった。