笠井 特徴としては、インド本土からの軍機による空からの物資補給が挙げられます。特に、日本軍から包囲され激戦となったインパールの北方にあるコヒマは、空輸がなければ日本軍の手に渡った可能性もありました。付け加えると、英印軍は、ビルマ失陥からの2年間でビルマ奪還に照準を定め、兵站の構築を含めて着々と備えを進めました。個々の兵をサポートする体制を徹底し、英印軍のW・スリム司令官は、士気の低下に対処するため、食糧事情の改善と医療態勢の整備に着手しました。マラリアなど感染症対策も含め現場の声を聞きながらシステム改革に乗り出し、戦場でも月に一度の歯科検診が義務付けられていたといいます。ほかにも道路の建設から「Vフォース」という現地での情報ネットワークの構築、日本語ができる要員の育成など、極めて周到に準備を行っていました。こういった準備の差が、結果に直結したと断言できます。日本軍は、あらゆる面で「読みが甘かった」としか言いようがありません。

笠井氏

米国の弾切れは予想できた

 齊藤 読みの甘さは、イラン戦争前夜の米国も同様です。私は2月末に攻撃が始まってすぐ、兵站の観点から「この戦争は先に撃つ弾がなくなった方が負けだ」と公言していました。着目したのは昨年6月、アメリカの支援を受けたイスラエルとイランによる「12日間戦争」です。この短期間で、米軍は保有する地上配備型ミサイル迎撃システム「THAAD」の30%を使用した、と報じられています。「THAAD」は年間100発程度しか作れず、1発20億円の費用がかかります。しかも弾道ミサイル1発を迎撃するために2発撃つ必要がある。そして、現時点で「THAAD」の残数は80〜120発程度と見られます。

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 笠井 それでは、迎撃に2発ずつ使うとなると……。

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 齊藤 そうです。イランがあと60発、弾道ミサイルを撃ったら、米軍はもうお手上げです。なおかつイランの弾道ミサイルは1発あたり、せいぜい数千万円程度ですから、まったく不釣り合いといえます。ですから、少なくとも米軍は在庫を補充してから、この戦争を始めるべきでした。加えて、イランがホルムズ海峡を封鎖し、その次の段階として機雷を撒くことも当然読めたはずなのに、4月になって慌てて掃海艇を日本の佐世保から呼び寄せるなど、後手に回っています。

※本記事の全文(約7000字)は、月刊「文藝春秋」9月号と、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(齊藤貢×笠井亮平「イラン戦争は現代のインパール作戦だ」)。

文藝春秋

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イラン戦争は現代のインパール作戦だ

出典元

文藝春秋

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