1990年、ウェールズの町で「2分で戻ります」と張り紙を残し、52歳の女性が忽然と姿を消した。所持品を残したまま失踪した彼女の行方は掴めず、捜査が暗礁に乗り上げるなか、事件は思わぬ展開を迎える。
鉄人社の新刊『知ったら最後、夜眠れなくなる 世界の未解決ミステリー68』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目)
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「2分で戻ります」とメモを残して消えた彼女
1990年6月16日朝、ウェールズ北東部の小さな町、ランゴレンの中心部チャーチ・ストリートでアンティークショップ「アティック・アンティークス」を経営する女性、トレヴァリン・エヴァンス(当時52歳)は車で自宅を出発し、いつものように午前9時半に店をオープンした。ほどなく店を訪れた常連客の後の証言によれば、トレヴァリンは普段と変わらぬ明るい様子で、今夜友人宅で開かれるパーティに行く予定だと話していたそうだ。
午前中だけで約25人の客や友人が店にやって来た。最後の訪問者はブリーフケースを持ったスーツ姿の白髪男性でトレヴァリンと親しげに話していたという。昼12時半、彼女が〈2分で戻ります〉とドアに張り紙し、店を離れる。トレヴァリンがこうした張り紙を残すのは珍しくなく、店の前では、文言どおり彼女がすぐに戻ってくるものと多くの客が帰りを待っていた。が、その後、トレヴァリンが戻ることは二度となかった。
彼女の姿は13時、店からほど近いキャッスル・ストリートを横切るところを目撃されている。次の目撃情報は14時半、自宅方面から店の方向に向かって歩く様子で、これが最後に彼女が確認された姿となった。普通に考えれば、店を出て自宅で1時間半ほど滞在した後、どこかに向かったものと思われるが、本当のところはわからない。
当日、ランゴレンから北に約50キロ離れた海岸の町ルドランに所有する別荘で改装作業を行っていたトレヴァリンの夫リチャード(当時58歳、もしくは59歳)が夜に何度か自宅に電話しても妻が出ないことを不審に感じ、近隣住民や友人に問い合わせるも所在を知る者はいない。そこで23時に北ウェールズ警察に通報。
これを受け、警察は店内に彼女のハンドバッグ、化粧道具、車のキーなど所持品が残されたままになっていること、車が店から約200メートルの駐車場に停めてあるのを確認したうえで、運河、鉱山、洞窟などを含むランゴレン一帯を徹底捜索し、さらには3ヶ月近くかけてランゴレンの全世帯を訪問、1千500人以上に聞き込み調査を行い、700台以上の車をチェックしたが、全て空振りに終わった。

