「パートナーに愛されている私」が1つ加わり、自分を拡張しているイメージです。その自分を健康でいさせるためには、3時間睡眠は良くないなって。ふらふらと夜の街を歩いていて出会った人もたくさんいますが、そういった出会いはこれからは手放さないといけないですね。
――生活が変わっていくことに怖さはありますか?
読者のみなさんがどう思うかというのは少し怖い気がします。もっと危険なことから生まれる、じめっとしたものを読みたいと期待している方も多いと思うので。
ありのままではなく試行錯誤した自分を選んで欲しい
――ご両親やご祖父母も伊藤さんを慈しみながら育てられたのだと思いますが、家族からの愛情では「愛されている私」は拡張しなかったのでしょうか?
そうですね。もちろん愛して育ててくれましたが、それは「無課金の自分」というか、勝ち取った自分ではないので。
――無垢な自分を愛されるより、様々な経験をして出来上がった「今の自分」を愛されることに意味がある?
ありのままの自分が愛されるってなんだか不安です。よく言われている「ありのまま」が何を意味しているのかはっきりとはわからないですが、自我のない赤ちゃんみたいな状態を指すのだとしたら、だったら誰でもいいことになっちゃいますよね。純粋無垢な状態の人間なんて、みんな似たようなものでかわいいですから。いろいろ経験をして試行錯誤したあとにあとに愛されると、選ばれた実感が生まれますよね。
――『魔女になりたい』では、お母様への憧れを感じさせる描写があります。幼い伊藤さんを愛してくれたお母様と、今のお母様との関係に変化はありますか?
母は、今の私のほうが好きだと思います。以前、母に「どうして子どもを二人産んだの?」と聞いたことがあるんです。そうしたら、「面白いから」と返ってきて。だから、人間として面白く成長できていたらいいなと思います。
母から、いわゆる“無償の愛”を感じたことはあまりないんです。母の美意識に背くようなことをすると、きちんと軽蔑される。子どもながらに「あ、今、軽蔑されている」と感じて、やめるんですよ。だから今でも、母のお眼鏡にかなう存在でありたいという気持ちはあります。
