坂本自身、2019年には打率.312、40本塁打を記録し、シーズンMVPに輝く大活躍を見せた。もちろん、その変化を張本の助言だけに帰することはできない。しかし、足の運びを指摘し、後に本人のコラムで動作の縮小を確認し、坂本の長打力も大きく伸びたという経過、記録は残っている。
「もっと振り込め」といった抽象論だけではない。どこを整理すれば、打者の能力をより安定して引き出せるか。張本は、そこまで踏み込んでコメントをしていた。
さらに、坂本のスタンスを考える際にも、この「構えから打つまで」の視点が欠かせない。構えた時点での両足の間隔と、踏み込んだ後の歩幅は別のものだ。狭く構えていても大きく踏み込む打者はいるし、広く構えて移動を抑える打者もいる。張本の指摘をさらに読み解くため、静止した構えだけでなく、打つ瞬間にどのような姿勢へ移行するかを見たい。
2020年の『週刊ベースボール』による連続写真の分析では、坂本の長所は、前でボールをさばく能力を保ちながら、重心を後ろに残す意識を加えた点にあると説明されている。必要な分だけ前へ移動し、それ以上は流されずに回転する、という整理だ。これは張本の解説そのものではないが、両者を照らし合わせると、坂本の打撃を「足を上げるか、上げないか」という二択で捉えられないことが分かる。
大切なのは、動かないことではなく、必要な位置で動きを収められること。スタンスの調整も、そのための手段として考えれば理解しやすい。張本の歩幅への着眼は、打撃を構えの形ではなく、一連の動作として評価するものだった。
大谷の打撃に対する踏み出した後に「待てる」ことの価値
大谷への指摘も、技術論として読む余地がある。
「右足を先に出すでしょ。その出し方が遅かったり早かったりする。早いと体重が投手方向に行くから手前の変化球を空振りする。良いときは先に右足が出ても曲がって、0.2秒くらいの時間ボールを探して打っていた。探して打つのと、探しながら打ちにいくのでは天と地ほどの差がある。早くこれを訂正しないと」(2021年9月19日「関口宏のサンデーモーニング」より)
好調時は、足を出して準備を整えても、まだボールに対応する余地がある。不調時は、足を出した時点で身体まで打ちにいき、変化球に対して待てなくなる。その違いを指摘しているのだ。
2021年、大谷は46本塁打で、48本の本塁打王には届かなかった。

