しかしフードコートへの進出を見ると、その評価は修正する必要がありそうだ。
大戸屋はフードコートへの出店にあたって従来の店舗をそのまま小さくしたわけではなく、一部にセントラルキッチンを活用するなど少人数でも運営できるようにオペレーションを変更している。
それでも定食という商品の核を残し、味が変わることにうるさい日本の消費者を満足させることに成功している。
その成功は大戸屋の業績にも表れている。買収前の2019年と最新の2026年を比べると、売上高は257億円から370億円へ約1.4倍に増え、営業利益は4億円から21億円へ5倍以上に拡大した。営業利益率も1.6%から5.8%まで改善している。
コロナ禍からの外食需要の回復や値上げなど複数の要因はもちろんあるが、それでも、大戸屋が業績を回復させながら新たな出店モデルをつくってきたことは確かだ。
創業者の死をきっかけに起きたお家騒動の果てに…
そして2026年6月、大戸屋ホールディングスでは創業家出身の三森智仁氏が新社長に就任し、現在を「第3の創業」と位置付けた。
そもそも大戸屋のコロワイドグループによる敵対的買収は、創業者の三森久実氏が2015年に亡くなった後に創業家と当時の経営陣が対立したことがきっかけだった。その混乱の中で創業家は、保有株をコロワイドへ売却することを決定した。当時の経営陣に任せるのではなく、コロワイド傘下に入ることを選んだ創業家の決断が結果としては正しかったと言えるだろう。
そして満を持して創業者の息子である智仁氏が社長に就任し、前社長の蔵人賢樹氏が進めてきた再建を土台に海外展開など次の成長段階へ入ろうとしているのだ。
現在、外食業界は食材価格や人件費、物流費、光熱費などすべてのコストが上昇し、人手不足も深刻になっている。店内で手間をかけて料理をつくる大戸屋のモデルは、とりわけこうした環境変化の影響を受けやすい。
もし大戸屋がコロワイド傘下に入らず、従来のやり方だけを守り続けていたら、現在まで同じモデルを維持できていたかは分からない。
スピード、品質、オペレーション、価格。その絶妙なバランスの上に成り立っている定食を前に、コロワイドの実力を感じるとともに、大戸屋が「変わることで守ってきたもの」を実感した。