ドラレコに映った事故の瞬間

 午前10時過ぎ、真菜さんと莉子ちゃんは親子用の電動アシスト自転車に乗り、南池袋公園に向かう。駐輪場に自転車を停め、西武池袋本店で買い物をする。その後、公園に戻って真菜さんの手作り弁当を食べ、正午きっかりに松永とビデオ電話で話した。松永が定時で帰ると伝えると、莉子ちゃんは「絵本を読んでね」とねだるのだった。

 最後に真菜さんは松永にこう言った。

「あと15分で自転車の駐輪場の(有料)時間になっちゃうから、そろそろ切るね」

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 真菜さんは買い物の荷物があり、この日は徒歩でなく、自転車を使ったのだ。松永は「自転車なんて珍しいね、気をつけて帰るんだよ」と言い、通話を終えた。

 同じ頃、飯塚夫妻はトヨタ・プリウスで目白台にあるレストランを目指して護国寺方面へ向かって出発。東池袋あたりを走行中、飯塚は「アクセルから足を離しているのに、速度が落ちない」と違和感を覚えた。

 加速する車は、縁石にぶつかった後、横断歩道を渡ろうとしていた自転車の後部に接触。自転車に乗っていた78歳の男性は数メートル上まで撥ね上げられ、地面に叩きつけられた。

 飯塚の車は時速96キロメートル近くに到達し、日出町第二公園交差点の横断歩道が眼前に迫る。車が暴走を始めてから、わずか10秒。午後0時23分。母娘の乗る自転車が視界に入った飯塚は、とっさにブレーキを踏んだつもりだった。

 ところが――。ここからは辛い記述になる。

 ドラレコの映像を確認すると、凄まじい衝撃音と飯塚夫妻の「うわあ!」という悲鳴があがる。真菜さんの麦わら帽子を捉え、すぐさま画面はヒビだらけのフロントガラスとエアバッグの素材とみられるもので覆われた。

 車に撥ねられた真菜さんは信号機の高さまで飛ばされた後、路肩にうつ伏せで倒れていた。自転車は事故の衝撃で分断され、チャイルドシートは衝突地点から約10メートル離れた交差点内に落ちていた。目撃者によれば、チャイルドシートの隙間から莉子ちゃんの足がのぞいていたという。

大破した車が事故の凄惨さを物語る

 事故には生死を分けた瞬間がいくつもあった。近くの横断歩道を親子用自転車で走っていた、ほぼ同年齢の母娘は車に撥ねられ、自転車ごと倒れて軽傷を負った。別の自転車は車の突入前に渡り切り、無事だった。