キャンペーンでの特大サプライズ
4 『永遠の記憶』の謎 〜特大のサプライズ〜
テーマをガリレオに戻そう。
2021年に刊行されたシリーズ第10作『透明な螺旋』では湯川学の出生にまつわる秘密が描かれた。読者から「シリーズの完結では?」という声が多く届いた。東野氏も「そうなるかもしれない」と考えていた。
そんな中、『透明な螺旋』の文庫化に際し、「東野圭吾を爆流(バズ)らせろ!」というキャンペーンを開催。ガリレオ短編のタイトル案を読者から募集し、「一番面白いタイトルを東野氏自身に選んでもらう」という企画だった。
「最優秀賞の読者へのプレゼントをどうするか」
編集者らが議論していたときに東野氏は「読者が一番驚くのは応募してくれたタイトルで短編を書くことじゃないだろうか。だとしたらそれをやろう」と自ら提案。ガリレオシリーズが再び動き出した瞬間だった。
「東野圭吾が読者のタイトルで小説を書く」という前代未聞のプロジェクトは反響も大きく、2万9000ものタイトルが集まった。その中から「タイトルを眺めていると、次々とドラマが湧いてくる」(東野氏)という選考理由で、「日常る(つづける)」が最優秀賞に選ばれた。「週刊文春」2025年9月11日号誌面から4週連続で掲載となった。
このとき優秀賞としてさらに4つのタイトルが選ばれている。
「日常る」を執筆した後もなお、この4つのタイトルが東野氏の心に響き続けていた。「他のタイトルでも新作を書いたら読者はもっと驚いてくれるのでは。みんな(編集者)も嬉しいんじゃないの(笑)」という発案で、短編集プロジェクトが密かに始まった。
2026年4月25日の朝、一通のメールが担当者の元に届く。
「『そろそろ原稿があがるかも』と言われ、短編集の準備をしていたのですが、メールに添付されていたのはまさかの長編でした。『読者の度肝を抜きたい』と常々おっしゃっていましたが、担当編集者まで腰を抜かされるとは!」(単行本担当者)
短編集としてタイトルやカバーが決定していたが、この日から長編刊行に向けての準備が始まった。6月19日、『永遠の記憶』のカバーとキャッチコピー「ガリレオ、最後の謎」が決定。本文の赤入れも終わり、静かに祝杯を挙げた。