市役所職員を騙って女子大生の部屋に入り込み、「子宮ガンになる」と言い放った男。不吉な言葉と強引な態度は、言葉巧みに被害者を心理的支配へと追い込んでいく――。女性6人を次々と従わせた“自称・霊媒師”の男(当時43)が見せた、卑劣で悪質な手口とは? 平成20年に発生した事件の発端に迫る。なおプライバシー保護のため、登場人物はすべて仮名である。(全2回の1回目/続きを読む

写真はイメージ ©getty

◆◆◆

「あなたには水子の霊が憑いている」

「市役所の者です。学生アパートは表札がついていない家が多いので、本当に住民登録された方が住んでいるかどうか、確認に来ました」

ADVERTISEMENT

 こう言って松永晃が女子大生のA子さん(同21)の自宅を訪ねてきたのは白昼の午後のことだった。

「アパートの契約書を見せてください。なければ、免許証か健康保険証でもいい」

 A子さんがチェーンロックを外すと、男は靴を脱いで上がり込み、部屋の中に入ってきた。その図々しさにも閉口させられたが、男は身分証を手にするなり言った。

「ふーん、生まれは五黄の寅だね。私は市役所の仕事をしながら、プロの霊媒師もしている。あなたには水子の霊が憑いている。いずれ子宮ガンになるよ」

 A子さんは当時、スピリチュアルをテーマにしたテレビ番組の大ファンだった。「世の中には霊が見える人がいるんだ」と信じ込んでいるところがあった。

 また、A子さんの祖母は流産した経験から水子供養を欠かさず、A子さんも幼い頃からお参りしていた。その上、叔母を20代の若さで子宮ガンで亡くしており、その言葉には恐怖感を持っていた。