「本当に市場として機能するのか」、「死亡事故が起こりはしないか」、「魚の安全性は保てるのか」――。
豊洲移転が目前に迫る今、改めて市場関係者の間で不安が高まっている。総工費6000億円以上をかけた「最新設備」を誇る豊洲市場が開場するのは10月11日。本来なら、希望に満ちた華やぎに満たされていてもいいはずだが、市場関係者の表情は一様に固い。
地盤沈下によって引き起こされた巨大な「ひび割れ」
「ここにきて、移転推進派だった人たちまで、顔を曇らせていますよ」(仲卸業者・男性Aさん)
一体、何がそこまで不安視されているのか。築地市場に赴き、人々の声を拾った。
「築地を離れることの寂しさ、というような情緒的な話ではないんです。いい話がまったく聞こえてこない」(同前)
豊洲市場はこれまで土壌汚染問題が、度々、取り上げられてきたが、その汚染状況も改善されない中、ここへきて、建物そのものに対する問題が持ち上がっている。
そのひとつが、深刻な地盤沈下だ。
9月上旬、仲卸棟西側で、横幅約10メートル、段差約5センチという「ひび割れ」が発見された。地盤沈下によって引き起こされた巨大な「ひび割れ」である。
「豊洲の店舗にダンベ(魚や水産物を入れる業務用冷蔵庫)を入れたら、それだけで床が沈んでしまった、という話もあります」(仲卸業者・男性Bさん)
豊洲は、もともと地盤が非常に緩い。その上に重厚長大な建物を作った。先日は、工事を請け負った業者から、「地中に打ち込む杭が十分に支持層(固い地盤)に届いていない」という内部告発もなされている(『週刊現代』2018年9月1日号)。
「豊洲の床耐荷重は本当に、大丈夫なのか」
緩い地盤、偽装工事……。ただでさえ不安が募る中、9月下旬になって、突如、豊洲市場内に貼り出された紙が、業者の人々をさらに驚愕させた。
「貼り紙に、『2.5トンフォークリフト、800kg』と書いてあります。2.5トンフォークリフトといったら、2.5トンの荷を積めるリフト、という意味なんです。それなのに、800キロまでって。一度にそれしか運べないのでは仕事になりません」(仲卸業者・女性Aさん)
この貼り紙は、「豊洲の床耐荷重は本当に、大丈夫なのか」という不安を改めて市場関係者に与えることになった。ターレ(運搬車)は本体だけで800キロ、荷を載せれば2トン近くになる。フォークリフトはさらに重く、荷物を載せれば6トンに近い。築地は1階部分だけが売り場だったため心配する必要がなかった。だが、豊洲の場合、中卸棟の売り場は4階まである。床が抜けたりしないか、十分な重みに耐えうる設計になっているのか。不安の声は尽きない。