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約1200万円の借金を残したが…
生前の借金を数えたところ3000円に達していた。昭和初期の1円の価値は、現在の4000円に相当するという試算がある。とすれば、当時の3000円は1200万円ということになる。かなりの大金だが、香典で生前の借金がほぼ清算できたとか。「金は天下のまわりもの」。いずれは自分のところに戻ってくる……と、和が生前に言っていた通りになった。苦しむ人々を救うことに費やした人生、それが報われた結果だったともいえる。
「慈愛」は代償や感謝を期待せず、ただひたすら相手のことを思って尽くす自己犠牲の精神。だが、普通の人がその心境に到達するのは難しい。利益を欲する打算、褒められたいという承認欲求といった不純物がどこかに入り込んでしまうものだ。
なぜお嬢様気質の和は愛されたのか
和にはそれがない。苦しむ人々に寄り添い、彼らのために奔走しつづける。まわりの空気や世間の常識など眼中にない。純粋すぎるがゆえ、独善や視野狭窄に陥り色々やらかすことも多かった。しかし彼女を理解しているまわりの者たちには、その欠点すらも愛すべきチャームポイント。それが和のカリスマを形成している大きな要素のひとつだった。
そのカリスマが、正式な看護教育を身につけたトレインド・ナースを日本にも普及させるのに大いに役立った。賤業と見なされていた看護婦(看病婦)という職業のイメージを払拭し、看護婦が医療現場に欠かせぬ専門職のひとつであることを知らしめる。和の強烈な個性が世間に露出することで、その達成が早められたのは間違いない。
青山 誠(あおやま・まこと)
作家
大阪芸術大学卒業。近・現代史を中心に歴史エッセイやルポルタージュを手がける。著書に『ウソみたいだけど本当にあった歴史雑学』(彩図社)、『牧野富太郎~雑草という草はない~日本植物学の父』(角川文庫)などがある。
作家
大阪芸術大学卒業。近・現代史を中心に歴史エッセイやルポルタージュを手がける。著書に『ウソみたいだけど本当にあった歴史雑学』(彩図社)、『牧野富太郎~雑草という草はない~日本植物学の父』(角川文庫)などがある。
