連続テレビ小説『風、薫る』(NHK総合)がいよいよ9月25日に最終回を迎える。
明治という激動の時代を舞台に、日本ではまだ馴染みのなかった“看護”の世界に飛び込んだ一ノ瀬りん(見上愛)と大家直美(上坂樹里)。今回で第114作目となる朝ドラの歴史において、血縁関係のないダブルヒロインは初の試みだ。大河ドラマ『光る君へ』の藤原彰子役で朝ドラヒロインの座を射止めた見上と、2410人が参加したオーディションから選ばれた上坂がともに看板を担う形となった。
人生を“切り拓く”直美と“受け止める”りん
りんと直美は、『あまちゃん』でいうところの天野アキ(のん ※放送時は能年玲奈)と足立ユイ(橋本愛)のような異なる魅力を持つバディで、2人でひとつの“朝ドラヒロイン”を形作っていた。
孤児として育った直美は、自らの力で道を切り拓いていく王道タイプの朝ドラヒロインだ。転んでもただでは起きず、ときに手段を選ばないそのしたたかさは、清廉で善良なヒロイン像が多い朝ドラのなかでも新鮮に映った。
一方のりんは、幼い娘とともに横暴な夫から逃れるように家を出て、家族を養うために看護の道を選ぶ。りんにとって、離縁は大きなアクションではあるものの、本質的には『ばけばけ』のトキ(髙石あかり)のように、人生から与えられた状況や役割を引き受けるタイプであり、その佇まいには『あんぱん』ののぶ(今田美桜)と同じく、人生が思い通りにはならないことを悟る者の静かな諦観が漂う。
2人のヒロインに共通していた“生きづらさ”
そんな正反対の2人を同じ道へと進ませたのは、学ぶ機会も生きるための選択肢も狭められていた、当時の女性たちに共通する“生きづらさ”だ。
アメリカ帰りの捨松(多部未華子)からトレインドナースの道を勧められたものの、当時の日本に、看護を学ぶための環境が十分に整っていたとは言い難い。梅岡看護婦養成所の第一期生となったりんたちは、辞書を片手に手探りで看護を学び、やがて一人前のナースへと成長。大学病院で経験を積んだのち、それぞれが自ら選んだ道へと歩み出した。
しかし、看護という考え方そのものが根付いていない当時の日本で、その重要性はなかなか理解されず、皮肉にも看護が社会に認識される契機となったのは、直美の夫・吾郎(甲斐翔真)も出征した日清戦争だ。人の生死と向き合う看護をテーマに据え、さらに戦争の影まで描いた『風、薫る』から、とりわけ心に残った場面を振り返ってみたい。



