「全部説明しなくていい」――わかりにくさを手放さない三人の共鳴

武井 この映画を見る人は混乱するかもしれませんが、僕も鴻池さんも既存のわかりやすいもの、世の中にウケているものに対するアンチテーゼを動力にして走っているところがある気がするんです。きっと水上さんも、日本の映画やドラマのわかりやすいセリフや、こんなこと言わないだろうというような芝居がかったセリフに対する抵抗があるんじゃないですか。

水上 あります。武井さんも僕も、原作のわかりやすくないところに共鳴したんじゃないかと思う。今、見る人に全部説明してあげないといけないような風潮があるけれど、そういう芝居を求められた時に僕は「そんな簡単じゃないだろう、もっと何かあるだろう」と違うものを探してしまう。自分みたいな若造にはわからないことがあって当然なのに、全部わかっちゃうのはおかしいと思ってしまう。ひねくれているんですね。

「自分はなんで生まれてきたんだろう」「なんでこういうことをしないといけないんだろう」と答えの出ない問いを禅問答のように続けるのが人生じゃないですか。だから「これがあるから自分は生きていける」というようなわかりやすいものが求められていて、それを作らないといけないようになっているとも思います。でも、世界的に評価されている作品が全部そういう表現かというと全然そんなことはない。この映画のように、わかりやすさとか「こうあるべき」とは反対方向へ行く映画があっていいし、こういう映画がなくならないでほしいなと思います。

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Ⓒ鴻池留⾐/⽂藝春秋/2026「本当にあった話(の話)」製作委員会

鴻池 たいへんな売れっ子である水上さんがそう言うことで、勇気をもらう人がたくさんいると思います。

水上 いえいえ。僕はわかりやすさの側に加担してもいるし、そこはどちらに付くということではなく、どちらも世の中に存在すべきだと思うんです。だからこそ、この映画はヒットしてほしいですね。多くの方々に見てほしいです。

(7月29日収録。初出=「文學界」2026年10月号)


ヘアメイク(水上氏)・Rina Kajiwara/スタイリスト(水上氏)・藤長祥平

【水上氏・衣装クレジット】価格は全て税込価格です。ジャケット¥92,400(シュタイン/エンケル TEL:03•6812•9897)シャツ¥37,400(サバイ/イボルブ TEL:03•6823•5074)パンツ¥49,500(イレニサ irenisa.com)その他はスタイリスト私物

■映画『本当にあった話(の話)』
・公開日:2026年10月2日(金)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー
・出演:水上恒司 黒木華 山下美月 大東駿介 山本浩司/小池栄子/佐々木蔵之介
・監督・脚本・編集:武井佑吏
・配給:東京テアトル/murmur
Ⓒ鴻池留衣/文藝春秋 /2026「本当にあった話(の話)」製作委員会
公式HP: https://www.honbana.com/

■原作
・鴻池留衣『本当にあった話(の話)』(文藝春秋刊)

本当にあった話(の話)

鴻池 留衣

文藝春秋

2026年8月6日 発売

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