「大統領と体格が近いから」と春日野部屋の親方も協力

 国技館は、土俵を中心に客席が四方へ広がるすり鉢状の造りになっている。外側の座席ほど階段状に高くなっているとはいえ、他の観客は床に座って観戦しているため、そこに椅子を設置する以上、後方の視界を妨げないよう配慮が必要だった。また、枡席は鉄柵で区切られているため、椅子に座った時に膝の裏が前の鉄柵に当たらず、足裏が床につく高さに調整する必要があった。

 この調整では、大統領と同じくらいの身長で脚の長さも近いアメリカ人職員に加え、春日野部屋の親方の協力もありがたかった。「大統領と体格が近いから」と言って、椅子の幅や膝の角度、立ち上がりやすさを確認するため、何度も椅子に座ってくださった。座った時の姿勢が不自然でないか、表彰式へ移る際の立ち上がりがぎこちなくならないか。そうした細かな所作についても感想を共有してくださった。この一連の動きを見ながら、四方にカメラが設置された国技館で、畳から立ち上がる動作はバランスを崩しかねず、椅子の設置を選んでよかったと改めて感じた。

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 座席が決まれば、次は表彰式の式次第と、それに伴う動線の確認になる。サイトビジットと呼ばれる下見は、本番当日まで、最終取組が終わる午後6時以降に国技館で繰り返された。設営・儀典チームと警備担当に分かれ、それぞれの専門分野の細部を詰めていった。私は設営チームとして主に大統領の動線確認作業に参加した。

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 表彰式そのもののリハーサルも必要だった。式典では、土俵の上に誰がいて、どの位置で待機するか。大統領はどのタイミングで土俵へ上がり、どこで止まり、どの角度で表彰状を読み上げ、優勝杯を持ち上げて手渡すか。

 相撲協会による本番さながらのアナウンスに合わせて、大統領役のスタッフが土俵に上がり、表彰状を読み上げ、大統領杯を授与するまでの流れを何度となく繰り返し、無駄な動きがないかを詰めていった。大統領がこの一連の動作を視覚的に把握できるように、説明を担当する側近が大統領役になって表彰式の動きを実演し、その様子をスマホで撮影し説明用の動画に収めた。こうした下見と準備は相撲協会の方々の協力で進められ、私は通訳として、所作や動きの説明を担当した。