甲冑が並ぶ展示室にの空間に、琴の音が重なるレセプション

 博物館にフォーマルな宴会場はない。そこで、来場者用の一般的なカフェテリアに演出照明、装飾、花材、テーブルセッティングを持ち込み、外交行事仕様に整えた。国務省のレセプションルームとは勝手が違い、レンタル機材の搬入経路、招待客の到着口と動線、設営手順まで、館外会場として一から確認する必要がある。

 日本の首相を迎える夕食会として、装飾や演出にも日本的要素を組み込んだ。

 甲冑が並ぶ展示室でのレセプションでは、1970年代から活動を続ける「ワシントン桐朋琴ソサエティ」に演奏をお願いした。演奏曲は『さくらさくら』、そして『アメリカ・ザ・ビューティフル(国歌に次いで好まれる愛国心の歌)』など、両国で親しまれている象徴的な曲目をそろえた。

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 やや照明を落とした展示室に、ガラスケース越しの甲冑が並ぶ。その空間に琴の音が重なり、展示室はレセプション会場としての格が出た。3人のアメリカ人奏者が着物を着て琴を弾く。桜寄贈百周年の時期とも重なり、視覚と音で「日米の友好関係」を補うことができた。

 舞台中央に設置された演台の両脇には、ビル・クリントン大統領が1998年11月に訪日した際、東京で小渕恵三首相から贈呈された盆栽を置くことになった。日本からの公式贈答品として、ここでも日米の友好関係の積み重ねを「実物」で示せるからだ。盆栽は、単なる飾りではない。切り花のアレンジメントとは違い、贈られて終わりではなく、維持管理が続く。その継続の手間そのものが、友好関係が一回限りではなく積み上げられてきたことを示す。演台の両脇に置く意味があった。

©︎文藝春秋

 夕食会の最後は特別演奏の時間を設けた。BGMではなく、演目を切って聴いてもらう、いわば「音楽の贈り物」である。演奏はバイオリニストの五嶋みどりさんにお願いした。米国を拠点に長く活動してきた日本人演奏家であり、「日本から来た主賓を迎える席」にふさわしい人選だった。

 演目はモーツァルト「ソナタ変ホ長調K.380よりロンド」と、フランク「ソナタ イ長調よりアレグレット・ベン・モデラート、アレグロ」。当日の立ち位置について本人から「舞台に上がるより、ピアノの横で弾きたい」という希望があった。演奏者自身の見栄えよりも、客席への音の届き方を優先した判断だった。音楽家のプロ意識と、日本的な慎みを感じた。結果として、観客の視線は自然と五嶋さんに集まり、グランドピアノの前でダイナミックに体を動かしバイオリンを弾く姿とともに、印象的な締めくくりとなった。

「ハナミズキを入れるよう」上層部からの指示

 テーブルの装花には「桜寄贈百周年を念頭に、桜への返礼として日本へ贈られたハナミズキを入れるように」と上層部から指示が出た。早速フローリストに手配をかけたが、「すでに今年のシーズンは終わっているので難しい」という答えが返ってきた。