「1杯2000円」なぜそんなに高いのか?

 ただ、初めて食べて感動に打ちのめされていた当時はまだ沖縄そばという認識そのものが王さんの中にもなく「ただただめちゃくちゃ美味い沖縄のラーメンを見つけた!」との受け止めだった。

 何が“めちゃくちゃ美味かった”のか。それは、そのすっきりとした鶏のスープだった。「いしぐふーのスープはそこまで味が強くなくて飲みやすいんですよ。澄んだ感じのスープは、台湾人が大好きな味です」(王さん)

王さんの言葉の通り、沖縄そばは台湾人の舌にマッチ。店は盛況だ(筆者撮影)

 王さんが話すように、台湾の食文化でスープは重要なポジションを占める。

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 貢丸湯、魚丸湯、酸辣湯など、どの食堂やレストランに行っても必ずと言っていいほどスープのメニューがあり、身近だ。王さんは地元を代表して説明する。「牛でも豚でも鶏でも、スープに動物っぽい臭みがあると、実は台湾の人から好かれにくいんですよ」

 日本食の代表格としてラーメンが世界各地で人気となり、もれなく台湾でも人気を博している。ただ、豚骨ラーメンのような豚の香りを前面に押し出したスープは台湾では“強い味”と認識されているという。たしかに、台湾のあちこちで食べられる麺料理の牛肉麺は、ふんだんに入った肉や濃い色のスープから得られるイメージとは裏腹に、意外なほどあっさりした味だ。

 沖縄の本家と遜色ないようなほぼ同じ味を提供しながらも、使う鶏は台湾産のものにこだわった。台湾の食材を使ってインパクトを作りたいという思いがあったからだ。ただ、“臭みのない自然な味”を追求して辿りついた先に採用した鶏は“超高額”。台湾を代表する高級ブランド鶏「桂丁鶏」だ。

 その結果、石工夫日麺の客単価は日本円で2000~3000円ほど。同店の出店に協力した「鶏そば屋いしぐふー」店長の稲福さんは「沖縄そばをそんなに高い金額で出して、本当に大丈夫かなぁと思いましたよ」と振り返る。

このようにセットで頼むと客単価は3000円ほど。沖縄の相場とはかけはなれた価格設定だ(筆者撮影)

 沖縄の人々にとって、沖縄そばに高級なものという感覚は、まずない。近頃の物価高騰の影響や、創作心のある一風変わった沖縄そば店の出現はあるものの、それでも「1000円を超えたら高いよね。一昔前は400円とか500円で食べられたよね」みたいなイメージなのである。

 そこから「1000円の壁」どころか2000円の世界に突入しようとの話だった。外食文化が根付く台湾では、テイクアウトの昼食が120台湾元(約600円)ほどなので、そこと比較しても普通に高い。

 それでも王さんは自信満々だった。その理由は、店が位置する「新竹県」の特別な土地柄にある。