対処法についても体験談などを読んで勉強し、遭遇した際にはすぐにクマよけスプレーを構えてゆっくり後退するというシミュレーションを何度も行なっていた。
クマが猛スピードで襲い掛かってきた
だが、クマは唸り声を上げながら、100パーセントの敵意をむき出しにして、猛スピードで襲い掛かってきた。そんな準備も心構えもまったく役に立たないシチュエーションだった。そのときの状況を、三浦はこう振り返る。
「ほんと『マジかよ』と思いました。クマの襲撃が避けられない場合は防御姿勢をとるということも知っていましたが、いきなり襲われたときにカメになるというのは、恐ろしすぎて思い至りませんでした。
ある意味、やられるがまま、になるわけですから、逆にすごく勇気がある人じゃないとできないと思います」
文字どおり窮地に追い込まれた三浦が本能的にとった行動は、クマと闘うことであった。唸り声を上げて突進してきたクマに対し、三浦も「うぉおあー!!!」と大声を上げて立ち向かった。
次の一文は、事故の顛末を綴って公開した「note」からの引用である。
クマの体の感触は、岩のように硬い
〈「大声を出す」というのは熊に遭遇した際にするべき行動ではないと聞くが(相手を興奮させるので)、どう考えてもすでに戦闘回避のフェーズではなかった。闘いはもう避けることができないことを悟って自らを奮い立たせるためと、大声を出せば逃げてくれないかなという感情が4:6で混ざった『うぉおあー!!!』だ〉
闘いの詳細はよく思い出せない部分もあるが、こちらの最初の一撃が右足での前蹴りだったことははっきりと覚えている。クマは四つん這いで向かってきたので、足裏が当たったのはおそらく頭か肩のあたりだろう。
その感触が岩のような硬さだったことに戦慄した。イヌやネコに触れれば優しい柔らかさが伝わってくるが、クマは柔らかさのカケラもない、ガチガチの硬さだった。