指を噛まれ、左耳の後ろを爪で引っ掻かれた
クマはその攻撃に怯まず、立ち上がって襲いかかってきて、左手の人差し指と中指を噛まれた。立ち上がったときのクマは胸の高さほどだったので、体長は120センチほどだったと思う。
左手を噛まれて前屈みになったときに、左耳の後ろを爪で引っ掻かれたようだった。そのまま揉み合いになり、前蹴りで応戦しているうちに、蹴りの勢いでうしろに倒れ込んでしまった。
背負っていたザックには撮影機材や多めの水が入っていて十数キロぐらいの重さだったので、それもバランスを崩した一因となった。倒れ込んだあと、のしかかってきて攻撃されるとヤバいと思い、寝転んだ体勢から蹴りを繰り出した。
いわゆる「猪木VSアリ」状態である。唸り声を上げながらなおも攻撃を仕掛けようとするクマに、死に物狂いで猪木キックを連発しているときに、爪で左足首に挫傷を負わされた。
やがてクマとの闘いが終わった
襲われていた時間は、計30~40秒ぐらいに感じた。必死で蹴り続けていると、突如クマは180度方向転換をして、襲われたときと同様の猛スピードで逃げていった。出現したときとほぼ同じ場所に姿を消したのち、薮のなかから再び飛び出してこないことを確認すると、ようやく安堵感が湧いてきた。
起き上がってまず考えたのは、「早く下山しないと。しかしどういう経路で下山するか」ということだった。気がついたらスマホがなくなっていた。地図アプリを見ながら歩いていたので、クマに襲われた際に放り出してしまっていたのだ。
幸い、ちょっと戻ったところに落ちていたので拾い上げ、自分がどこにいるのか改めて確認した。電波は圏外となっていて、電話はかけられなかった。
血だらけになりながら最短ルートで下山
前述したとおり、現場から人里まではあと1キロほどの距離だったが、最短距離で人里に下りようとすると、クマが逃げていった方向に進むことになる。逆に引き返して大きく迂回するルートをとると、大幅に時間がかかってしまう。