家のことでいっぱいいっぱいの生活でしたが、一方で、小学校5年生ぐらいからタバコを覚えたり、万引きをしたり、ゲームセンターで“タダで遊ぶ”方法を編み出したり、ゲームの機械からお金を抜き出したりしていました。

『先生は、元極道 元極道講師が子どもたちのために歩む 人生「生き直し」物語』(彩図社)

初めての万引き

 好きな物を食べたいのに、食べられない。

 それが万引きを始めるきっかけだったと思います。

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 父と祖母の食事を作るのは僕の仕事でしたが、生活保護を受けているため、食費は常にギリギリで、自分の食べたい物を買うことはできませんでした。

 でも、食べたい盛りなので、スーパーに行くとどうしても好物に目が奪われます。

 僕はいくらが大好物でした。

 でも、高価なので普通には買えません。

 最初は鮮魚コーナーで見ているだけでしたが、ある日、気がついたら指でパッケージのラップを破って一つまみのいくらをすくい出していました。そして、それを口に入れると、ものすごく美味しいのです。

 それからスーパーに行く度に、同じようなことを繰り返すようになりました。やがてそれがエスカレートしていき、いくらをパッケージごと万引きするようになります。盗んだいくらは、父や祖母に隠れてこっそり食べました。盗んだいくらを食べると、そのときだけ口の中で幸せを感じることができました。

 もちろん、万引きは決して許されない行為だとわかっています。

 どんな状況でも人の物を盗ることは許されないし、もしあのときの自分に会えるのなら「万引きはダメだ!」と叱るでしょう。

 でも、当時の僕には、そうするしか他に道はなかったのです。