かつてのパイオニアも今は三番手に
そんなタントの快進撃に待ったをかけたのが、2011年に登場したホンダ・N-BOXである。競合車種を上回る車内空間や、プレーンで質感の高い内外装など、軽の常識を覆すほどのインパクトを発揮し、またたく間に販売台数トップの座を奪っていった。
その後はタントもモデルチェンジのたびに巻き返しを図るが、そのつど改良されたN-BOXに突き放される展開が続く。さらにスズキ・スペーシアなど第三勢力の商品力も高まり、市場におけるタントの優位性は揺らいでいった。
こうして競争が激化し、どの車種も登録車と遜色ない装備を手に入れていくにつれ、スーパーハイトワゴンは車選びにおいて「もっともスタンダードな選択肢」となっていく。
しかし軽に対する「狭い」「安っぽい」といったイメージが過去のものになる一方、そのジャンルを切り拓いたはずのタントは、2023年末のダイハツ認証不正問題なども重なり、ここ数年はN-BOXとスペーシアの後塵を拝する格好となっている。
「軽のオラオラ化」はタントから?
それでも、タントがエポックメイキングな車であったことにかわりはない。
「子育て」に焦点を当てたパッケージングに加え、注目したいのは「カスタムグレード」の設定である。
2003年の初代タント発売から1年半後には早くも、「男タント、タントカスタム」というキャッチフレーズのもと、メッキパーツと専用エアロを装着した「タントカスタム」が投入されているのだ。
今でこそN-BOXやスペーシアなど、ギラついたカスタムグレードの設定はスーパーハイトワゴンの常道となっている。しかし遡ってみると、軽市場においてターゲットに応じて顔つきを大きく変える手法は、もともとダイハツのお家芸だった。初代ムーヴに端を発するこの伝統はタントにも継承され、その後の「軽のラグジュアリー化」の流れを作り出した。
このように「通常モデルとの違い」を意識する層の心をいち早く掴んだことは、その後この車が「改造のベース」として長く愛される一因だったのかもしれない。


