タントと「平成ギャル」の意外な親和性
ところでタントがリリースされた2000年代中頃は、90年代半ばに最盛期を迎えた平成ギャルたちが、ちょうど成人し家庭を持ちはじめた時期とも重なる。
当時、ダッシュボードの白いファーや、アニマル柄のシートカバー、スイッチ類のラインストーンによる装飾など、「車内を盛る」文化はすでにギャルカルチャーの一部として浸透しはじめていた。
たとえばカー用品メーカー大手のカーメイトが2009年、元『小悪魔ageha』のカリスマモデル・桃華絵里(モモエリ)氏をプロデューサーに迎え、芳香剤やドリンクホルダーなど若い女性向けのファンシーな車内用品を展開したのも、その延長線上に位置づけられる。
こうした装飾品を持ち込むうえで、車内のスペースは広いに越したことはない。車内用テーブルにドリンクホルダー、ぬいぐるみに芳香剤……。空間が広ければそれだけ、自分の世界を拡張できる。
その点で、軽自動車でありながら広大な車内空間を実現したタントは、「車内を自分色に染めたい」というニーズの受け皿たりえたのだろう。
価格の面でも、初代モデルはエントリーグレードで100万円~、カスタムグレードでも130万円ほどの車体価格。「若者のクルマ離れ」が指摘されはじめた時代にあっても、手を出しやすい価格帯だった。
カスタム界隈ではN-BOXよりタント
このような背景から、タントはN-BOXらに先駆けてカスタム愛好者の手にかけられ、現在でもさまざまな層の改造マニアたちを虜にしている。
たとえば貨物船の機関士として働く男性は、20年ほど前に母親が新車で買ったタントを、免許を取った直後からこっそり弄りはじめた。車高を落としたあたりで母親から「もう乗れない」と匙を投げられ、そのまま譲り受ける形になったと語る。
それから20年間弄り続けた結果、改造総額はいまや500万~600万円に。軽は規格が限られている分、小さな違いがわかりやすい――それが、彼が軽自動車にこだわり続ける理由だという。
通勤用として購入したタントを、いつの間にかイベント専用車に育て上げてしまった男性もいる。弄っているうちに通勤にはとても使えない仕様になってしまい、今ではまた別に足用の車を用意し、このタントは自宅で大切に保管しながらイベントにだけ出しているのだとか。
かけた費用は車体込みで500万円ほど。タントが持つ「弄りたくなる魔力」に取り憑かれてしまった一人である。



