ただ、少なくとも美祢線に関しては、廃止後も地域と事業者の関わりは続くようだ。実際、JR西日本では、BRTの導入に向けて高校生とのワークショップにも参加し、意見交換を行っている。

 そして、美祢市が抱える課題のひとつである“二次交通”にも、ともに克服に立ち向かう。そのツールのひとつが、e-Paletteというわけだ。

 美祢市は、秋吉台という山口県、いや中国地方を代表する観光地を持つ。そこに訪れる観光客の大半は、マイカーやレンタカーでやってくるという。新山口駅や美祢駅から路線バスという手段もあるにはあるが、公共交通を使う人は少数派だ。つまり、美祢は車がないと来にくい観光地なのである。

ADVERTISEMENT

すっかり雑草に覆われている美祢駅
列車が来なくなった美祢駅の改札
美祢駅。いまも駅前にはタクシーが客を待っている

「秋吉台は今年4月に世界ジオパークに認定されたのですが、それをアピールしてもアクセスする手段がわかりにくい。ですから、世界ジオパークをアピールするとともに、JRさんと一緒に二次交通にも取り組んでいこうと考えています」(森山さん)

 美祢市には、市内二次交通として路線バスやデマンドタクシーなどがある。ただいずれも市役所や病院、買物などに用いる地元の人たち向けのきらいが強い。畢竟、観光に使うには心許ないものがある。

 e-Paletteは、こうした既存の二次交通を補いつつ、規定のルートに縛られない柔軟な活用も期待できるというわけだ。観光ツアーに用いない日には市民の足として使うこともできるし、広い車内と大きな窓を生かし、夜景の見える移動式バーのような使い道も可能だ。

「観光客の新しいニーズを探り、どうすればより使ってもらえるのか意見を聞く。それで来年以降に繋げていく取り組みが必要だと思っています」(森山さん)

 もとより美祢市を訪れる観光客は、そのほとんどが秋吉台などを目的としており、鉱業都市の色が濃い美祢駅周辺の中心市街地までやってくる人は少ない。ただ、今回の観光ツアーでは美祢駅や中心市街地を経由するルートが予定されている。現在はまだ美祢線の代行バスだが、それを利用して美祢駅に降り立ち、そこからe-Paletteに乗り継いで市内周遊観光へ、といった按配だ。

美祢駅の近くには小さな歓楽街も
 

「BRTに向けてどう盛り上げていくかが大事です。最終的に美祢線のBRTでの復旧が間違いではなかった、より生活が便利になり、観光客も増えて町が賑やかになったと言ってもらえるように進めることが必要なんだと思っています」(森山さん)

 そのためにはまず、美祢という町に注目してもらう。そして美祢に足を運んでもらい、町の魅力を知ってもらう。そのための手段のひとつが、次世代モビリティ・e-Paletteなのである。

「巨大な工場」がすごかった

 列車が来なくなって久しい線路がすっかり雑草に覆われている、ターミナル・美祢駅。すぐ近くにはかつて炭鉱で働く人たちで賑わったという小さな飲食街がある。そこから東に向かって国道を歩くこと約15分。