「理解してほしい」のではなく「知ってほしい」

――SNSで誹謗中傷されることもあると伺いました。メディアに出てる棈松さんを見てアンチになってる人もいるのでしょうか。

棈松 それもあります。あと、ちょっと前にSNSでトゥレットの汚言症の男性について「女性や子ども、自分より弱い存在を狙って加害してるんじゃないか」みたいな投稿がバズってたんで、そこは当事者として何かしら弁明をしたくて「一概にそうとは思わないでほしい」みたいな発言をしたんです。そしたらこっちに火の粉が飛んで来て。

©︎文藝春秋

 SNSとかで誹謗中傷してるのは、顔も名前も知らない人ですよ。そういう人って、鬱憤を晴らしたくて、何か言える対象を常に探してる感じがします。でも俺は、自分も障がいを持ってるし、弱者視点で見るんで「こういう中傷攻撃をする人たちも、同じように何かしら抱えて苦しいことがあるんだろうな」と思って、許しちゃうんです。

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――弱者視点だからこそ、許せるんですね。

棈松 あと、嫌なのが「トゥレットを理解してほしいんだったら」って言い方をされるパターン。俺は「理解してほしい」とは言ってない。伝えてるだけ。俺ができることはそこまでだから、理解するかどうかはそっちが判断して、と思ってます。

 だから「理解」ってワードが好きじゃなくて、今は使わないようにしてるんです。昔は表現の仕方がわからなかったから「理解してほしい」ってメディアとかでは言ってしまっていたけれど、本来は「知ってほしい」ですね。言い方としては。

たどり着いた「別のところでバランスを取ればいい」という考え方

――「こうやって周りに接してほしい」というのはありますか?

棈松 本当は、僕のことなんて空気ぐらいに思ってほしいって思いますけど、周りにどうなってほしいって期待しても現実的には無理。「見ないでよ」と思うけど、おばちゃんとかは二度見三度見する。ずっと見てる人にはイラッとして「一回見たら分かるでしょ」とか言ってました。うん、俺はあんまり「いい障がい者」じゃないです(笑)。

「こういう病気でこういう状態だから」ってちゃんと説明はしますよ、一応「できたら慣れて」とも言うし。自己中って本来ダメなことじゃないですか。でもある程度、自己中に生きなきゃ、もう無理なんです。「悪いけどちょっと迷惑かけさせて。みんなの迷惑も許すから」って感じです。うるさくしてびっくりさせることもあるし、怖がらせることもあるけど、別のところでバランス取ればいいと思ってる。そうやって割り切るしかないんです。

 

 特に日本は「人に迷惑をかけるな」っていう風潮が強いし、SNSでも「人に迷惑かけてる自覚あるんだったら外出するなよ」とか「声帯を取れ」とか言われちゃうんですよ。俺みたいな「イケイケ障がい者」を見てると、たぶん腹が立つんでしょうね。